「責任を取れ」と言われると、私たちはしばしば「辞任」や「謝罪」といった“終わりの行為”を思い浮かべます。けれども本来、責任とは“始まりの覚悟”です。商いにおいても仕事においても、「責任を負う」ことは「信頼を生む力」と言い換えられます。では、私たちは日々どのようにその責任と向き合えばよいのでしょうか。
「取る」とは、結果に向き合う勇気
ニュースで「責任を取って辞任する」という言葉を耳にすると、責任とは“失敗の後始末”だと誤解しがちです。しかし、「取る」とは、結果を他人のせいにせず、自ら受け止めること。つまり、責任を取るとは、逃げない勇気を持つことなのです。
たとえば商人が仕入れを誤って在庫を抱えたとき、その責任を「誰かのせい」にすれば、学びは残りません。けれども自らの判断として引き受ければ、その経験は次の挑戦に生きる。「取る」責任は、結果を糧に変える覚悟の表現と言えるでしょう。
「果たす」とは、約束を守り抜く力
一方、「責任を果たす」は、信頼を築くための行為です。お客様に「また来たい」と思ってもらうこと、社員に「この人と働きたい」と感じてもらうこと──それらはすべて、約束を守り続ける日々の積み重ねから生まれます。
責任を果たすとは、結果を出すことだけではありません。困難に直面しても、約束を投げ出さず、誠実に行動し続けること。「果たす」責任には、努力・継続・信義という時間の要素が伴います。老舗店の多くが長く愛されるのは、売上のためではなく、顧客との約束を果たし続けてきた証なのです。
「負う」とは、他者の信頼を背負う覚悟
そして、商人にとって最も大切なのが「責任を負う」ことです。それは、誰かの期待と信頼を引き受ける覚悟を意味します。商業界創設者・倉本長治は、「商人は、売った後にこそ責任を負うと語っています。
この一言に、商いの真髄があります。商品を売ることが目的ではなく、買ってくださったお客様の満足を最後まで見届けることが責任だというのです。売った瞬間に関係が終わるのではなく、そこから本当の商いが始まる――倉本が説いた「売った後の責任」は、まさに顧客との信頼関係を永続させる哲学なのです。
現代の企業で言えば、販売後のフォローやアフターサービス、苦情対応にその精神は現れます。「不具合が起きた時にどう対応するか」が、その店や会社の本当の姿を映し出します。責任を負うとは、信用を守る盾を持ち続けることにほかなりません。
責任とは「応える力」
英語の “Responsibility” は、「Response(応答する)」+「Ability(力)」から成り立つ言葉です。つまり責任とは、「応える力」を意味します。お客様の期待に、仲間の信頼に、そして自分自身の理想に、どう応えていくか――その力こそが、商人の誇りです。
「責任を取る」は覚悟、「責任を果たす」は信頼、「責任を負う」は誇り。三つの責任を重ねることで、商いは単なる取引ではなく、人の心をつなぐ営みへと昇華します。
責任とは、終わりを示す言葉ではなく、次の一歩を照らす光です。今日の一つの約束に、あなたの責任を少しだけ込めてみませんか。その積み重ねが、やがて商人としての信頼を形づくります。






