笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

「どうしてこんなに手際がいいんですか?」

 

臨店指導に訪れた小さな商店で作業を手伝うと、アルバイトスタッフに驚かれることがあります。答えは単純です――経験がものを言うのです。学生時代のバイト経験が今に生きています。

 

企業や個人の成果が、経験とともに効率的かつ高品質になることを示すのが「経験曲線の法則」です。アメリカのボーイング社で初めて体系化された理論で、一般に「生産量が倍になるごとにコストは一定割合で下がる」と表現されます。

 

商売の現場では、単なるコスト削減だけでなく、作業効率・接客力・判断力の向上にも通じます。

 

量をこなすことで磨かれる力

 

関東地方のある地方都市で営業する洋菓子店の事例です。新人スタッフがクッキーを焼くと、時間がかかり、形も不揃い。しかし、数週間で毎日のオペレーションを繰り返すうちに、同じ作業時間で以前より美しい焼き上がりが可能になりました。

 

店主はそこで気づきました。「技術だけでなく、スピードや段取りも経験で向上する」と。

 

その後、スタッフには一度に多くの量を焼く「まとめ作業」を取り入れ、作業ログを記録。効率化が進むだけでなく、作業手順の改善点も見えてきました。

 

結果、商品のロス率は前月比20%減。お客様からの満足度も高まり、売上の安定につながりました。

 

振り返りと改善が大切

 

経験曲線の法則は、ただ繰り返せばいいというものではありません。「振り返り」と「改善」が伴うことが大切です。

 

小さな作業を可視化する
誰がどの手順でどのくらい時間をかけたかを記録すると、改善点が見つかります。

 

量をこなしながら質を上げる
ただ作業するだけでなく、毎回「前回より良くする」ことを意識します。

 

改善策を即実践する
例えば商品の包装方法や並べ方を少し変えるだけでも効率や見栄えが向上します。

 

大切なのは「経験を重ねながら、改善する」という循環です。量だけを追い求めても、成長にはつながりません。経験と振り返りを組み合わせることで、作業効率も接客力も飛躍的に伸びます。

 

最初の一歩が二歩目に続く

 

経験曲線の法則は「失敗を恐れず、量をこなす勇気」と「振り返る習慣」の重要性を教えてくれます。商売は一朝一夕で身につくものではありません。しかし、日々の積み重ねが確実に力になります。

 

今日からできる第一歩は何でしょうか。まず、一つの作業を「何回やったか」と「どう改善できるか」を記録しましょう。そして、その日に気づいたことを一つだけ改善してみるのです。

 

この小さな積み重ねが、1か月後、3か月後には大きな差となって現れます。「経験は裏切らない」という言葉の意味を、実感できるはずです。

 

商売において経験は、単なる慣れではなく、あなたの店の強みをつくる力になります。今日の小さな一歩が、未来の繁盛の基盤を築くのです。

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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