商いの現場は、常に選択と判断の連続です。ときに欲に駆られ、またときに知恵で突破し、人との縁に救われます。
イソップ童話は、そんな商人の日常を映し出す“鏡”のような存在です。今回は「犬と影」「カラスと水差し」「ライオンとネズミ」の三つを題材に、現代の商いに生かせる真髄をひもといてみましょう。
「犬と影」
──欲をかきすぎれば、すべてを失う
肉をくわえた犬が川を渡る途中、水面に映った自分の姿を“他の犬”と勘違いしました。そしてその犬の肉を奪おうと吠えた瞬間、くわえていた肉を川に落として失ってしまいました。
これは「欲に目がくらめば、本当に大切なものを失う」という教えです。商売でも同じです。過剰な利益を追い、値上げや原価率を無理に下げた結果、常連客を失う──そんな失敗例は少なくありません。
ある洋菓子店では、観光ブームに便乗して値段を大幅に引き上げました。一時的に儲かりましたが、地元の常連が離れ、ブームが去った後に売上は激減。残ったのは「高いだけの店」という評判でした。
➡明日すぐできる一歩
価格や仕入れ、販促を見直してみましょう。「今あるお客様を大切にしているか?」の視点を一つ加えるだけで、失わずに済む繁盛があります。
「カラスと水差し」
──小さな工夫が大きな成果を呼ぶ
のどの渇いたカラスは、水差しの底の水に口が届かず困っていました。しかし小石を一つずつ落とし、水面を上げて飲むことに成功しました。
資金力や立地に恵まれなくても、“小さな工夫”が道を拓きます。実際、ある商店街の青果店はスーパーに価格で勝てない状況に悩んでいました。そこで「一人暮らし用に半分カットした野菜」を売り始めたところ、逆に「便利で無駄がない」と評判を呼びました。競争の劣勢を覆したのは、カラスの小石のような“知恵”だったのです。
➡明日すぐできる一歩
今日の売場やサービスに「小さな工夫」をひとつ加えてみましょう。包装の仕方、声かけの言葉、商品の見せ方──それが明日の繁盛の礎になります。
「ライオンとネズミ」
──小さな縁を侮らない
ライオンに助けられたネズミは、後日、罠にかかったライオンの縄をかじって救いました。力の差があっても「小さな存在が大きな力になる」ことを示しています。
商売においても、「小口客だから」「少額の取引だから」と軽視してはいけません。小さな縁がやがて大きな繁盛に結びつくことがあるからです。
ある呉服店では、帯締め一本しか買わないお客様にも丁寧に接していました。後にそのお客様が娘さんの結婚式で一式揃える際、真っ先にその店を選びました。ネズミがライオンを救ったように、小さな縁が大きな売上をもたらしたのです。
➡明日すぐできる一歩
今日訪れるお客様を「小さく見ない」こと。一人ひとりを丁寧に扱う習慣が、思わぬ繁盛のご縁につながります。
童話は商売の羅針盤
犬と影が示す「欲の戒め」、カラスと水差しが語る「工夫の力」、ライオンとネズミが教える「縁の大切さ」。どれも商人に欠かせない心がけです。
商いは、人と人との心のやりとり。 イソップ童話に映し出された教えを、明日の商売の一歩にしてみてください。







