ある老舗の和菓子店を訪れたとき、80代のご婦人が毎日決まった時間にひとつだけ、最中を買っていくという話を聞きました。不思議に思って尋ねると、店主はこう言いました。
「ご主人を亡くされたそうでね。その方が好きだった最中を、仏壇にお供えするのが日課なんです。だから、朝のうちに、皮がパリッとしてる状態でご用意してるんですよ」
商品はただの「モノ」ではありません。お客様の思い出や、日常や、人生と結びついた「心のかけら」でもあるのです。それに心を込めて応えること。それが、商人としての誠実さであり、使命ではないでしょうか。
店は、客のためにあります。そして、店員とともに栄え、店主とともに滅びる。
この言葉の意味を、私は「商いは関係性の仕事である」と読み解いています。お客様に尽くすことで、従業員もやりがいを得て笑顔になり、店全体が元気になる。その逆に、店主が利益ばかりを追い、人を見なくなったとき、商売は崩れていく。
商いとは、数字や売上だけでは測れない「信頼の積み重ね」です。だからこそ、一人ひとりのお客様に、今日もまっすぐ向き合うこと。その姿勢が、明日の商いをつくっていくのです。
どうか、今日という一日に、あなたの誠実が実を結びますように。そして、その積み重ねが、店を支える「ありがとう」の数となりますように。それこそが、商人としての、最高の報酬なのです。






