忙しいのに、なぜか売上が伸びない。一日中動き回って、気づけば閉店。疲れは残るのに、達成感がない。売場を見渡すと、どこか散らかって見える。お客さまは入っているのに、迷っている様子が多い。——そんな日が続くと、心が削られます。
こういうときほど、人は「新しいこと」を足したくなります。企画を増やす。SNSを増やす。品数を増やす。キャンペーンを増やす。しかし、忙しいほど足し算は効きません。現場が回らず、疲弊が深まるからです。
忙しいときに最初にやるべきは、足し算ではありません。整えることです。整えるとは、掃除の話だけではありません。お客さまが迷わず、疲れず、気持ちよく買える状態をつくることです。
今日は、店を蘇らせる「三点修正」をお伝えします。売場、導線、POP。この三つです。
“品数”ではなく“選びやすさ”
忙しくなると、売場は増えがちです。売れ筋を前に出し、在庫を並べ、気づけば情報も商品も盛りだくさん。ところが、売場が詰まるほど、お客さまは選べなくなります。
生活防衛の時代、人は「失敗したくない」気持ちが強い。選択肢が多すぎると、迷いが増え、買わずに帰る確率が上がります。店がよみがえる第一歩は、品数を増やすことではなく、選びやすさの回復です。
やることは大がかりではありません。売場を「三段構造」に戻します。
• まず「主役」を決める。今日いちばんすすめたい商品を一つ。
• 次に「比較」を一つ。主役と迷ったときの“もう一つ”。
• 最後に安心の「定番」。迷ったらこれ、という逃げ道。
この三段があるだけで、買い物は楽になります。お客さまが「決められる」売場は疲れない。疲れない売場は滞在が伸びる。滞在が伸びると購入が増えます。忙しいほど、売場を増やすのではなく、主役を立てて絞る。それだけで蘇ります。
導線は「回遊」より「短距離」
導線というと、回遊させて滞在時間を伸ばすという発想がよく出ます。もちろん一理あります。けれど忙しい時代、そして忙しい現場では、回遊設計は逆効果になりやすい。
お客さまが求めているのは気持ちの良い回遊ではなく、迷わず目的に到達できる短距離です。店の中で立ち止まる回数が増えるほど、人は疲れます。疲れると「今日はいいや」が増えます。
導線の整え方はシンプルです。店の入口からレジまでを、頭の中で一本の線で描いてください。その線の上に、「詰まり」がないかを見つけるのです。詰まりの正体は多くの場合、次のようなものです。
・入り口付近に物が出すぎて狭い。
・棚の角が視界を遮る。
・人気の棚の前で人が滞留する。
・レジ周りに紙類や備品が散らばる。
原因は小さくても、詰まりは大きなストレスになります。忙しいほど、導線は“引き算”が効きます。入口は一歩広く。角は見通しよく。レジ周りは整理して手を動かしやすく。この短距離が整うと、店全体が軽くなります。
POPの役割は「決断」を助けること
忙しい現場ほど、POPが増えます。伝えたいことが多いから。聞かれる手間を減らしたいからです。結果、売場は文字だらけになり、肝心の言葉が埋もれます。
POPの役割は、説明ではありません。お客さまの決断を助けることです。だから一言でいい。むしろ一言がいい。おすすめの型は三つです。
一つ目は、「迷ったらこれ」。買い物の迷いを終わらせます。
二つ目は、「誰に向くか」。「初めての方へ」「手間を減らしたい方へ」「失敗したくない方へ」。自分ごとになった瞬間、人は動きます。
三つ目は、「失敗しない理由を一行」。「味がぶれない」「手入れが楽」「長持ちする」「今日は状態が一番いい」というように、短い理由が納得になります。
POPが強い店は接客も強くなります。スタッフの言葉が揃い、店の印象が揃い、安心が増えるからです。
三点修正を「15分」でやり切る
整えることは、時間がないとできないと思われがちです。しかし整えは、短時間で効果が出ます。だから忙しい店ほど効きます。明日、15分だけ取って次の三つを実践してください。
最初の5分で主役商品を一つ決め、売場の主役を立てる。
次の5分で入口からレジまで歩き、詰まりになるものを一つだけ外す。
最後の5分でPOPを一枚だけ書き換える。「迷ったらこれ」か「失敗しない理由」を選ぶ。
この三点修正が終わると、店は軽くなります。軽くなると、現場の空気が変わります。空気が変わると、お客さまの動きが変わります。商いは、こうしてよみがえります。忙しいほど、足し算ではなく整えましょう。売場、導線、POPの三つを整えるだけで、店はもう一段強くなります。





