「今、何が売れますか?」
現場でよく受ける質問です。景気が読みにくく、流行の移り変わりも速い。だからこそ“当たる商品”を探したくなる。痛いほどわかります。
けれど、取材を重ねるほどに確信が深まっていきました。伸びる店ほど、ヒット商品より先に、ヒットを生み出す土台を持っています。それは何か――習慣です。
売れる商品は、時代とともに変わります。しかし、繁盛店の「店の整え方」「お客さまへの向き合い方」「改善の回し方」は変わりません。彼らは“当てにいく”のではなく、“当たりが出る状態”を毎日つくっています。
今日はその核心を、明日から使える形でお届けします。テーマは、「勝てる商品」より「勝てる習慣」です。
ヒット商品は運、繁盛は再現できる習慣
売上の波には、店の努力だけではどうにもならない要素が混ざります。天気や気温、近隣工事、競合のセール、SNSの流行、そして物価高。どれも現場の実感として大きい。それらに一喜一憂し続けると、店主の心もスタッフの現場も、じわじわ疲弊していきます。
だからこそ、自分たちが握れるものに力を注ぎましょう。繁盛店は、ここがうまいのです。
入口が「入りやすい顔」になっているか。売場が「迷わせない設計」になっているか。伝えるべき価値が「一言で届く」状態になっているか。昨日の反省が今日の改善に「つながっている」か。こうしたことは、景気がどうであれ、今日から積み上げられる資産です。
そして重要なのは、続くのは気合いではなく仕組みだということ。繁盛は才能ではなく、習慣でつくれます。再現可能なのです。
「毎日の5分」で店は伸びる
「忙しくて、とても習慣なんて」――その声は当然です。だから私は、いきなり大きな改革を勧めません。繁盛店が必ず持っているのは、驚くほど小さくて確実な習慣です。
ポイントは、時間の長さではなく、頻度。10時間の会議より、毎日の5分。ここに誰でもできる勝ち筋があります。
まず「入口の5分」。
人は入店前に、ほぼ決めています。入りやすいか、わかりやすいか、安心できるか。だから入口は最大の売場です。開店前に外から店を眺め、看板は読めるか、ドアまわりは清潔か、店が今いちばん伝えたい提案が入口にあるか、掲示が多すぎて迷わせていないかを確かめる。たったそれだけでも、店全体の空気が引き締まります。何より、店主自身の「今日も商いを始める」気持ちが立ち上がるのです。
次に「一言の5分」。
売場が弱るとき、情報が足りないのではありません。情報が散らばって伝わらないのです。だから“今日の一枚”を決める。POPでも黒板でもSNSでもいい。ひとつだけでいいから、価値を一言に圧縮しましょう。「迷ったらこれ。失敗しない定番です」「寒い日に体が喜ぶ、やさしい一杯」「今日入荷。旬の香りが一番です」。一言が立つと、売場に芯が通ります。芯が通ると、接客の言葉が揃います。言葉が揃うと、店の印象が強くなります。繁盛は、こうした連鎖で起きます。
そして「感謝の5分」。
繁盛店は明るいだけではありません。折れにくい。ここが決定的に違います。折れにくさをつくるのは根性ではなく記録です。閉店後に一行だけ書く。「今日いちばん嬉しかった言葉」「今日いちばん助けられた出来事」「今日守れた約束」。これを続けると、店主の視線が変わります。足りないもの探しから、積み上がったものの確認へ。視線が変わると、次の改善が生まれ、スタッフの表情が変わり、結果として売上にも返ってきます。
習慣は「引き算」で定着する
ここが肝心です。習慣が続かない最大の理由は、足し算だからです。忙しい現場に、さらに何かを追加する。これでは続きません。
繁盛店がやっているのは、足し算ではなく引き算です。やめることを決めて、空いたところに5分習慣を置く。たとえば、毎日SNSを頑張るのをやめて週2回に固定する。POPをたくさんつくるのをやめて一言POPを1枚に絞る。全部の棚を完璧にするのをやめて入口だけを毎日整える。反省会で長く話すのをやめて改善点を一つだけ決める。
“やめる”は諦めではありません。守るための選択です。店を守り、人を守り、続けるための技術です。習慣の目的は、理想の自分になることではありません。現場が回り続ける状態をつくること。状態ができたとき、商品もサービスも、自然に強くなっていきます。
まずは「入口の5分」だけでいい
最後に、明日やることを一つに絞ります。入口の5分。開店前に外から店を見る。そして自分に問いを一つだけ投げるのです。
「今日、初めて来る人は、安心して入れるだろうか」という問いにYESと言える入口をつくる。それだけで、店の空気は変わります。
勝てる商品を探すのは、もちろん大切です。けれど商品は“波”。習慣は“地盤”。地盤が強い店は波を乗りこなします。地盤が弱い店は波に飲まれます。
あなたの店の未来を守るのは、大きな一発ではなく、今日の5分です。今日の5分が、明日の自信になる。明日の自信が、次の挑戦を連れてくる。商いは、その積み重ねで強くなっていきます。






