イギリスの歴史学者シリル・ノースコート・パーキンソンが提唱した「パーキンソンの法則」は、「仕事は、与えられた時間をすべて使い切るまで膨張する」というものです。
本来なら1時間で終わる仕事でも、締切が1週間後なら、7日間かけて引き延ばされてしまう。反対に、同じ内容でも「30分で」と区切れば、意外と短時間で片づいてしまう。これは誰もが経験したことのある現象でしょう。
この法則は、官僚組織の非効率さを皮肉ったところから広まりましたが、商人の日常にも深く関わっています。会議の長さ、資料づくりの回数、売場づくりの準備期間──時間を区切らなければ、いつのまにか「だらだら」膨らみ、結果として本来の目的を見失ってしまうのです。

会議時間を半分にした店
埼玉県にある文具店では、毎週1時間のスタッフ会議を行っていました。ところが、話が堂々巡りになり、会議後に「……で、結局どうするの?」という不満が残ることが多かったのです。
そこで経営者は、思い切って会議時間を30分に短縮しました。さらに「議題はあらかじめ一つに絞る」「結論と担当者を必ず決めてから終える」というルールを徹底しました。
すると、不思議なことに以前よりも会議の密度が高まり、スタッフの発言も具体的になりました。短時間で決定した施策をすぐに試すサイクルが生まれ、売場改善のスピードが格段に速くなったのです。
この店では、以前は年間に3〜4回しか大きな売場改善を実行できませんでしたが、ルールを変えた後は毎月1回ペースに増加しました。まさにパーキンソンの法則を逆手に取った成果でした。
最初の一歩が二歩目に続く
商人にとって、限られた人員と時間をどう使うかは死活問題です。ここでの学びは「余白を制限することが、効率を高める」という逆説的な知恵です。
最初の一歩としてできることは、「あえて締切を短く設定する」ことです。たとえばPOPづくりなら「1時間以内に必ず仕上げる」と決めてしまう。すると言葉を練りすぎることがなくなり、お客様に伝わるシンプルな表現が生まれやすくなります。
次の二歩目は「仕事の区切りを見直す」ことです。毎日のルーティンを惰性で続けていると、知らず知らずのうちに時間が膨張します。「この作業は10分以内で終える」「この会議は30分以内に結論を出す」と小さな制限を設けると、不思議と時間が濃縮されていきます。
そして最後に大切なのは、「削った時間を次の一手に充てる」ことです。浮いた時間をぼんやり過ごすのではなく、「新しい商品を試す」「常連客に声をかける」など、未来につながる行動に投資しましょう。
パーキンソンの法則を知ることは、単なる効率化の技術ではありません。それは「時間に流されるか、時間を支配するか」という商人の姿勢を問うものです。時間を区切る勇気を持てば、今の働き方は必ず変わります。そしてその変化は、小さな店であっても驚くほどの成長をもたらすのです。







