笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

欠けているからあなたは光る

人は誰しも、欠点をなくそうと努力します。遅い、頑固、不器用、口下手──社会の中では「欠けている」とされる部分を補い、平均点を目指すことが“正しい”と教えられてきたからです。

 

けれど、商いの世界に長く身を置いていると、むしろ「欠点の中にしか、その人らしさは宿らない」と感じる場面が少なくありません。欠点、案外捨てたものではありません。

 

欠点の裏側にある長所

 

ある小さな時計店の話です。ご主人はとにかく口下手。お客様と世間話をするのが苦手で、接客も短くそっけない。奥様はいつも「もう少し笑顔で話してよ」とやきもきしていました。

 

ところがある日、修理を頼んだ常連客がこう言いました。「この店は、余計なことを言わないから信用できるんだよ」。以来、ご主人は無理に愛想をつくろうとせず、「黙って仕事で語る」職人としての誇りを貫くようになりました。結果、“正直な店”としての評判が口コミで広がっていったのです。

 

短所は、見る角度が変われば強みに変わります。人より話すのが遅い人は、相手の話をじっくり聴ける人です。頑固な人は、信念を貫ける人です。不器用な人は、手を抜かず丁寧に仕上げる人です。欠点をなくすより、その裏側にある長所を磨くことのほうが、よほど価値があるのです。

 

欠けがあるから人は惹かれる

 

商売においても、完璧すぎる店はどこか味気ないものです。すべてが整いすぎた高級ホテルよりも、手づくり感のある宿にあたたかみを感じるのは、人の手の“ゆらぎ”が安心や親近感を生むからでしょう。

 

あるパン屋の店主は、焼き上がりの形が少しずつ違うパンを並べながらこう言いました。「うちは“同じように”じゃなく、“その日らしく”焼いてるんです」。その言葉にこそ、欠点を受け入れた職人の強さがありました。

 

欠点を隠そうとするほど、仕事は窮屈になります。けれど、欠点を個性として見せられるようになったとき、人は自由に、そして自然体で働けるようになります。お客様もまた、そんな“ありのまま”の商人に惹かれるのです。

 

欠けを「輝き」に変える視点

 

「欠点とは裏から見れば長所である」──広島の街を歩いていて、ある寺院の前に掲げられていた法語です。そこには「人は完全ではない。完全を目指すより、欠けを磨いて光らせなさい」というあたたかいまなざしがありました。

 

欠点を嫌うのではなく、どう活かすかを考えましょう。その姿勢が、商いの創造力を育てます。たとえば、立地が悪い店なら“探してでも行きたくなる理由”をつくる。品ぞろえが少ないなら“選ぶ手間のない安心感”を伝える。従業員が少ないなら“顔が見える関係”を深める。

 

“ない”ことを嘆くより、“ある”ものを磨きましょう。“できない”ことを補うより、“できる”ことで輝きましょう。それが、商人の生き方です。

 

欠点があるから人は人らしい

 

欠点のない人など、世の中におりません。にもかかわらず、私たちはつい他人と比べては「自分には足りない」と思い込み、完璧を目指してしまいます。けれども、完全であることが人の魅力ではありません。むしろ、欠けを抱えながらも歩み続ける姿こそが、人間らしく、そして美しいのです。

 

欠点を受け入れた人は、他者の弱さにも寛容になれます。失敗を恐れず、不器用さを笑いに変えられる人ほど、まわりに安心と希望を与えます。そんな人のもとには、自然と信頼が生まれ、温かな人の輪が広がっていくのです。

 

商いもまた同じです。商いとは、完璧さを競う場ではなく、誠実さを磨く道であります。間違えたときは素直に詫び、できなかったことは改善し、できることを一つひとつ丁寧に積み重ねていく。その積み重ねこそが、商品以上の価値となってお客様の心に届くのです。

 

欠けが誰かの“救い”になる

 

どうか、自分の欠点を責めないでください。欠点の裏には、必ず「人の温度」があります。あなたの不器用さが、誰かの信頼を呼ぶこともあるでしょう。あなたの遅さが、相手に考える時間を与えることもあるでしょう。あなたの迷いが、同じように悩む人の支えになることもあります。

 

欠点を隠すより、そこに光を当ててみましょう。光の向きを変えれば、影は模様に変わります。欠けの中にこそ、あなたの誠実さや努力の跡が宿っています。そこに生まれる“味わい”こそ、あなたの商いにしか出せないものです。

 

あなたの“欠け”が、誰かの“救い”になるかもしれません。それこそが、商人としての誇りであり、人としての希望なのです。欠けを抱えながらも、なお光を求めて進む姿──そこにこそ、人生の深さと商いの尊さがあります。

 

今日もどうか、自分を責めず、欠けを抱いたまま進んでください。その一歩一歩が、あなたらしい光を放ち、誰かの明日を照らすのです。

 

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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