笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

「千載の下に学ぶ」と言われるように、歴史の先人の言葉には、時代を超えて通用する知恵が詰まっています。その筆頭が、古代中国の思想家・孔子です。2500年前に生きた彼の教えは、現代の商いにも通じる「普遍の人間学」として、私たちに多くの示唆を与えてくれます。

 

「利を見て義を思う」──儲けよりも信頼を

 

「君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る」(論語・里仁編)と孔子は言っています。これは、「立派な人物は何が正しいかを考え、つまらぬ者は何が得かを考える」という意味です。商いは利益を追求する営みであることに違いありませんが、孔子はそれだけでは人の心を得ることはできないと説いています。

 

お客様が店に通う理由は、値段や便利さだけではありません。「この人から買いたい」「この店を応援したい」と思われるような信頼と人間味の積み重ねこそが、商いの本質です。短期的な利益よりも、「義=道理・まごころ・信義」を守ることが、長く選ばれる店の条件になるのです。

 

たとえば、困っている常連客に無理のない支払い方法を提案したり、不良品があれば誠実に対応したり。目先の損得よりも、お客様との関係を大切にする姿勢が、結果として大きな信頼と支持につながっていきます。

 

「恕」──相手の立場に立つ商い

 

孔子の思想の核心には、「恕(じょ)」という言葉があります。「己の欲せざる所、人に施すことなかれ」、つまり「自分がされて嫌なことは、他人にもしないようにしなさい」という教えです。これは単なる道徳の教訓にとどまりません。お客様の立場に立ち、気持ちに寄り添って接する姿勢は、現代の商いにもそのまま活かされる原則です。

 

「自分が客だったら、どうされたいか?」と想像すること。無理に売ろうとせず、押しつけず、相手のタイミングを尊重すること。あるいは、商品やサービスに説明責任を果たすこと。それらすべてが、「恕」の精神から生まれる実践です。

 

たとえば、ある老舗和菓子店では、高齢のお客様の歩くペースに合わせて、椅子を出したり、商品の説明をゆっくり丁寧にしたりする配慮を怠りません。「自分の親だったらどうしてあげたいか?」という思いやりが、自然と形になっているのです。

 

孔子の教えは、商いの道標

 

孔子の思想は、経済的な成功を否定するものではありません。むしろ、正しい道を歩みながら、まっとうな成果を得ることの大切さを説いています。商いにおいても、「義」をもとに「利」を得る──それが孔子が目指した理想のあり方です。

 

AIやデジタル技術が進化し、効率とスピードが重視される現代だからこそ、私たちはもう一度、人間としての原点に立ち返る必要があります。孔子の言葉は、その確かな道しるべになるのです。

 

人を思いやり、道理を重んじる。そんな商いが、これからの時代にこそ求められているのではないでしょうか。

 

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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