笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

「海外からのお客様が増えましたね」

 

最近、そんな声を地方の商店街や観光地でよく耳にします。円安の追い風もあり、インバウンド観光客による消費が再び活況を呈し、多くの商人にとっては喜ばしい現象でしょう。

 

しかし、この「インバウンド消費の波」に、ただ“乗る”だけでは、持続的な繁盛にはつながりません。むしろ、波に「流されて」しまうリスクすらあります。大切なのは、波に乗るのではなく、「自ら波を起こす」こと。それこそが、これからの商人に求められる姿勢ではないでしょうか。

 

インバウンド消費は、「観光客が来れば売れる」「団体ツアーが来れば忙しくなる」と、どこか“他力本願”になりがちです。けれども、そのような状況は一時的であり、観光トレンドの変化や国際情勢に左右される不安定な要素でもあります。

 

大切なのは「この店に行きたい」「あの人に会いたい」と思ってもらえる“理由”を、自らの力で築くことです。

 

たとえば、京都市左京区にある手拭い専門店「永楽屋細辻伊兵衛商店」は、創業400年以上の歴史を持ちながら、近年ではインバウンド観光客にも人気を集めています。

 

人気の理由は、ただ「日本っぽい商品がある」からではありません。この店では、店員がひとつひとつの柄の意味や由来を丁寧に説明し、希望すれば名前や記念日を入れるカスタムまで行っています。海外のお客様にとっては、日本文化を“買う”のではなく、“体験する”機会となっているのです。

 

観光客が「わざわざ来る」店

 

「通りすがりの一見さん」に頼る商売ではなく、「わざわざ来るお客さま」を増やすためには、次のような視点が必要です。

 

1.地域性を打ち出す
全国どこでも買えるもの、見られるものではなく、「ここでしか体験できない」「この人でなければ語れない」価値を育てること。地元の素材や技法、伝統行事との連携が鍵になります。

 

2.言葉を超えるおもてなし
言語対応も大切ですが、それ以上に大切なのは、笑顔・所作・空間づくりといった“非言語コミュニケーション”。「わかろうとする姿勢」が心を動かします。

 

3.“撮りたくなる”演出
SNSの影響力が強い現代では、商品の見せ方や店舗のデザインも重要な要素。外国人観光客が思わず写真を撮りたくなるような“絵になる場面”を意識しましょう。

 

商人は文化大使

 

インバウンド対策とは、単なる売上対策ではなく、“文化の伝達”であり、“地域の語り部”としての役割でもあります。ある意味、商人は「文化大使」であると言っても過言ではありません。

 

そのためには、自分の扱う商品や地域について、深く理解していることが不可欠です。素材や工程、歴史的背景など、「知っている」だけでなく、「語れる」ようにしておくことが大切です。そうすることで、ただの“物売り”から、“物語を届ける人”へと進化するのです。

 

「波を起こす商人」へ

 

今後、インバウンド需要はますます多様化していくでしょう。そのときに求められるのは、“数をこなす”ことではなく、“心に残る”体験を提供する力です。

 

商人として、地域文化の発信者となり、訪れる人々に「この町にまた来たい」「あの店主にまた会いたい」と思ってもらえるような関係性を築く──それこそが、本物の繁盛の道です。

 

波が来るのを待つのではなく、自ら波を起こす。その先には、どこにも真似できない、自分だけの商いの未来が広がっています。

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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