笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

悠々自適の本当の意味

昨日のこと。62歳の誕生日の朝、敬愛する先輩から電話をいただきました。お祝いの言葉を頂戴しただけでもありがたいことですが、その会話の中で、先輩は「悠々自適」という言葉について教えてくださいました。

 

悠々自適というと、仕事を終え、時間にもお金にも余裕を持ち、のんびりと暮らす姿を思い浮かべます。私も、どこかでそのように受け止めていました。しかし、本当の意味は少し違うのだそうです。

 

「悠々」は、ゆったりと落ち着いていること。「自適」は、自分の心にかなうように生きること。つまり悠々自適とは、何もしない生活ではありません。世間の評価や他人の物差しに振り回されず、自分の心に従って生きることなのです。

 

電話を終えた後、心の中にあたたかなものが残りました。誕生日に新しい知識を教えていただいたからだけではありません。これからの私の生き方を励ましてくださったように感じたからです。

 

 

暇であることではない

 

悠々自適は、仕事から退くことでも、責任を手放すことでもありません。忙しく働いていても、自分が納得して選んだ道を歩んでいるなら、それは悠々自適です。反対に、時間やお金に余裕があっても、人の目を気にし、世間の価値観に縛られているなら、心は少しも悠々としていません。

 

大切なのは、予定が詰まっているかどうかではなく、その予定を誰が決めているかです。何をするかだけでなく、なぜするのかを自分でわかっているかどうかです。悠々自適とは、時間が余っている状態ではaありません。自分の人生の主導権を、自分で握っている状態なのです。

 

この言葉を知ったとき、これからの人生に一本の軸をいただいたように思いました。

 

 

人生の主導権を取り戻す

 

私たちは知らず知らずのうちに、人生の主導権を人に渡してしまいます。周囲にどう見られているか。期待に応えられているか。同世代と比べて遅れていないか。もっと成果を上げなければならないのではないか――。そうした思いに追われていると、自分が本当に大切にしたいものが見えなくなります。

 

もちろん、人は一人では生きられません。仕事には責任があり、家族や仲間への配慮も必要です。しかし、人とのつながりを大切にすることと、人の評価に支配されることは違います。

 

人生の主導権を握るとは、好き勝手に生きることではありません。自分で選び、その結果を引き受けることです。誰かの役に立つことも、困難な仕事に挑むことも、自分の意思で選ぶからこそ喜びになります。

 

62歳になり、私はこれまで以上に働きたいと思っています。書きたいことがあり、伝えたいことがあり、会いたい人がいます。まだ知らない商人の話を聞きたい。これまで教えていただいたことを、次の世代へ手渡したい。失敗や間違いも含め、自分の経験を誰かの力に変えていきたいと思います。

 

それは、悠々自適とは正反対の忙しい人生に見えるかもしれません。しかし、自分の心が望む仕事を選び、自分なりの役割を果たしていくことも、立派な悠々自適なのだと思います。

 

 

誕生日にいただいた言葉

 

年齢を重ねるとは、できることが減っていくことではありません。何を大切にし、何を手放すかが、少しずつ見えるようになることではないでしょうか。

 

すべてを引き受けなくていいし、人と同じ道を歩かなくてもいいのです。これまでの肩書や成功にしがみつく必要もありません。心から大切だと思える人とつながり、自分だからできる仕事に力を注ぐ。その選択を自分で重ねていくことが、人生の主導権を握るということなのでしょう。

 

誕生日の朝にいただいた一本の電話は、私にとって何よりの贈り物になりました。節目の日を覚えていてくださったこと。わざわざ声を届けてくださったこと。そして、これからの人生を照らす言葉を教えてくださったこと。そのお気持ちがうれしく、電話を切った後もしばらく胸があたたかいままでした。

 

人は、誰かからいただいた言葉によって、新しい一歩を踏み出すことがあります。私もまた、誰かにとってそのような言葉を届けられる人でありたいと思います。

 

悠々と、しかし歩みは止めず。人と比べるのではなく、自分に与えられた道を、自分の意思で歩いていく。62歳からの人生も、その主導権をしっかりと握りながら、感謝を忘れず、自分らしく進んでいきます。

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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