今日、62歳になりました。多くの方々からメッセージをいただき、本当にありがとうございます。人とのつながりこそ、62年間で得られた財産だと強く思います。長くお会いできていない方々もいるし、不義理したままの方々もいるのに、こうして祝福してくださることへの感謝を込めて、今日のブログを書きました。お読みいただければ幸いです。
若いころ、60代という年齢はずいぶん遠い先にあるものだと思っていました。けれど、いざその場所まで来てみると、不思議なほど自分自身は変わっていません。まだ知りたいことがあります。会いたい人がいます。行ってみたい場所があります。書きたいことも、話したいことも、やってみたい仕事もあります。
そして何より、まだ学びたいと思うのです。
62歳の誕生日を迎えて、まず心に浮かぶ言葉は「よくここまで頑張った」ではありません。「ありがとうございました」です。
振り返れば、私は本当に多くのものをいただいてきました。仕事を教えてくださった先輩。取材に応じてくださった経営者や商人の皆さん。一緒に働いてきた仲間。講演や研修に呼んでくださった方々。私の話を聴いてくださった方々。文章を読んでくださる方々。ときに厳しい言葉で気づきを与えてくださった方々。利害なしに大切な時間を共有してくださった方々。そして、長い時間をともに歩いてくれた家族。
自分の力だけでここまで来たような顔をしてはいけないな、とあらためて思います。今の私をつくっているものの多くは、誰かからいただいたものだからです。
教えてきた以上に教えていただいた
私は長く、商業の現場を取材してきました。30年にわたり5000社を超える企業や店を訪ね、多くの商人、経営者、そこで働く人たちの話を聞いてきました。商売とは何か。繁盛とは何か。人を大切にするとはどういうことか。働くとは、生きるとは、どういうことなのか。その答えを、私は机の上だけで学んだのではありません。目の前で商いを続ける人たちから、一つずつ教えていただきました。
だから、講演や研修で人前に立つようになった今も、ときどき思います。私は本当に、人に何かを教えているのだろうか、と。むしろ、誰かから教えていただいたものを、別の誰かへ運んでいるだけなのではないか。ある店で聞いた言葉を、別の町の経営者へ。ある経営者の失敗から学んだことを、これから挑戦しようとしている人へ。ある商人の生き方から受け取った勇気を、いま苦しんでいる誰かへ。
そう考えると、自分の仕事の意味が少し見えてくる気がします。いただいたものを、次へ渡す――それが、これからの私にできる恩返しなのだと思います。
ただ、ここで一つ、正直に書いておかなければならないことがあります。私はけっして、うまく生きてきた人間ではありません。判断を間違えたこともあります。人の気持ちを十分に考えられなかったこともあります。もっと早く気づけばよかった、あのとき別の言葉をかければよかった、と今になって思うことも少なくありません。うまくいかなかった仕事もあります。遠回りもしました。悔しい思いもしてきました。
62歳になったからといって、人間が完成するわけではありません。むしろ年齢を重ねるほど、自分の知らないことや至らなさが以前よりよく見えるようになってきました。だからこそ、学びを止めてはいけないと思っています。現場へ行く。人に会う。話を訊く。本を読む。考える。書く。そして、ときには自分が正しいと思っていることさえ疑ってみる。
経験とは、もう学ばなくてもよくなるためのものではありません。より深く学ぶための土台なのだと思います。
そして最近、自分の強みとは何だろう、と考えることがあります。何でもうまくやってきたことではありません。たくさん迷い、間違え、失敗し、そのたびに「なぜだろう」と考えてきたこと。その積み重ねこそが、いま誰かの役に立てるものなのかもしれません。
成功談だけでは、人を励ませないことがあります。「私も失敗しました」「私も迷いました」「それでも、そこからこう考えました」という言葉だからこそ、届く相手がいる。そうであるなら、失敗もまた無駄ではありません。
そこから何を学び、どう次へつなげるかによって、失敗は誰かを支える力に変わります。これからは、うまくいったことだけではなく、うまくいかなかったことから学んだものも、もっと正直に伝えていきたいと思っています。
まだ渡したいものがある
62歳。若いとは言えない年齢になりました。これから、できなくなっていくことも少しずつ増えるでしょう。残された時間が無限ではないことも、若いころよりずっと現実的に感じます。多くを教えていただいた先輩、親しい友の死にも向き合ってきました。それでも、不思議と悲観する気持ちはありません。それどころか、やりたいことは増えています。それが今を生きる者の使命です。
もっと商人に会いたい。もっと現場を見たい。もっと人の話を訊きたい。もっと深く経営を考えたい。そして、そこで得たものを文章にし、講演で語り、研修で伝え、対話の中で磨きながら、一人でも多くの人へ届けたいと思っています。
「明日から、もう少し頑張ってみよう」「自分の商売にも、まだできることがある」「この仕事を続けていてよかった」という気持ちを、一人でも多くの人に持ってもらえる仕事がしたい。世間に大きく知られることよりも、「この人、この会社の役に立てた」と実感できる仕事を、一つずつ重ねていきたいと思っています。
そして、私自身も皆さんから学び続けたい。だから、これからも話しかけてください。面白い店があったら教えてください。悩んでいることがあったら聞かせてください。「それは違うのではないか」と思ったら、どうか遠慮なく言ってください。一緒に考え、一緒に学び、一緒に少しずつ前へ進んでいけたら、こんなにうれしいことはありません。
62年間で、私は本当にたくさんのものをいただきました。とても、自分一人では返しきれないほどです。だから、いただいたご恩を、その人だけに返すのではなく、次の誰かへ渡していきたいと思います。教えていただいたことを伝える。励ましていただいた分、誰かを励ます。助けていただいた分、誰かの力になる。
ご恩を返すというより、ご恩を送る。そんな生き方ができたらと思います。
62歳。まだ未熟です。まだ知らないことばかりです。これからも、きっと間違えるでしょう。失敗もするでしょう。それでも、学ぶことを止めず、考えることを止めず、人と出会うことを止めない。そして、その途中でいただいたものを、また次の誰かへ手渡していく。
これまで出会ってくださったすべての皆さんへ、心からありがとうございます。そして、これから出会う皆さんへ、どうぞよろしくお願いいたします。まだ学びたいことがあります。まだ会いたい人がいます。まだ役に立ちたい人がいます。
だから、62歳からも歩き続けます。いただいたものを、次へ渡すために。








「62歳、感謝を次へ」への2件のフィードバック
おめでとうございます。
いつも、ありがとうございます。そして
これからも、よろしくお願いします。
私こそありがとうございます