笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

商品が利益を生む力を見極める

在庫高を見ると、店の中にどれだけのお金が商品として滞っているかがわかります。在庫回転率を見ると、その商品がどれだけ動いているかがわかります。欠品率を見ると、商品を減らしすぎたことで、売り逃しや信頼の損失が起きていないかが見えてきます。

 

では、商品が店にどれだけ貢献しているかを、利益と回転の両面から見るには、どの数字を押さえればよいのでしょうか。そこで見ておきたいのが「交叉比率」です。小売業では「交差比率」と表記されることもあります。

 

交叉比率とは、粗利益率と在庫回転率を掛け合わせた数字です。計算式は「粗利益率×在庫回転率」。たとえば、粗利益率40%の商品が一年に5回転すれば、交叉比率は200になります。粗利益率20%の商品でも、一年に10回転すれば、交叉比率は同じく200です。

 

 

売れる商品と儲かる商品は違う

 

この数字が大切なのは、粗利益率だけでも、在庫回転率だけでも、商品の本当の力は見えないからです。粗利益率が高い商品は、一つ売れたときの利益は大きいものです。しかし、なかなか売れずに在庫として長く残れば、資金は止まります。反対に、在庫回転率が高い商品はよく売れているように見えますが、粗利益率が低すぎれば、忙しいわりに利益が残りません。

 

計数管理に慣れていない人は、まずここを押さえるとわかりやすくなります。売上高は大きくても利益が薄い商品があります。利益率は高くても、年に数回しか売れない商品もあります。どちらも一つの数字だけを見ていると、よい商品に見えたり、悪い商品に見えたりします。しかし、交叉比率で見ると、「どれだけ利益を残しながら、どれだけ効率よく売れているか」が見えてきます。

 

商品は、大きく四つに分けて考えられます。

 

一つ目は、粗利益率も高く、回転もよい商品です。これは店に大きく貢献している商品です。二つ目は、粗利益率は低いけれど、よく売れる商品です。これは客数や来店動機を支える商品です。三つ目は、粗利益率は高いけれど、動きが遅い商品です。これは提案や見せ方によって育てる余地のある商品です。四つ目は、粗利益率も低く、動きも遅い商品です。これは置き続ける理由を見直す必要があります。

 

とくに注意したいのは、売上高だけで商品を評価してしまうことです。売上の大きい商品は目立ちます。発注量も増え、売場面積も広くなりがちです。しかし、その商品がどれだけ粗利益を生み、どれだけ在庫を効率よく動かしているかを見なければ、店への本当の貢献度はわかりません。売れているのに利益が残らない商品ばかりに力を入れれば、店は忙しくても苦しくなります。

 

反対に、売上高は大きくなくても、交叉比率の高い商品があります。粗利益率が高く、一定の頻度で売れている商品です。こうした商品は、店の利益を支える大切な存在です。売場の目立つ場所に置く。POPで価値を伝える。関連商品と組み合わせる。接客で使い方を説明する。少し手をかけることで、さらに店への貢献度が高まります。

 

 

数字で切らず商品の役割を見極める

 

交叉比率を見るときは、商品別、部門別、仕入先別に分けることが大切です。全体の数字だけでは、どの商品が利益を生み、どの商品が資金を止めているかはわかりません。部門ごとに見ると、売れているように見える部門の利益効率が低かったり、目立たない部門が実は店を支えていたりすることがあります。

 

ただし、交叉比率が低い商品をすぐに切り捨てる必要はありません。その商品には、来店動機をつくる役割があるかもしれません。品揃えの幅を保つ役割があるかもしれません。お客様の安心につながる役割があるかもしれません。

 

数字は判断材料であって、結論そのものではありません。数字を見たうえで、その商品が店にとってどんな意味を持つのかを考えることが大切です。

 

ここに、ベテランほど見直したい視点があります。長く商売をしていると、「この商品は昔から売れている」「これは置いておくべきだ」「これは利益が薄いから仕方がない」という経験則が生まれます。その経験は大切です。

 

しかし、環境が変わり、お客様が変わり、仕入れ価格が変われば、商品の役割も変わります。かつての売れ筋が、いまは利益を削っているかもしれません。目立たない商品が、実はいまの店を支えているかもしれません。

 

交叉比率を高める方法は、大きく二つあります。

 

一つは、粗利益率を高めることです。仕入れを見直す。値付けを見直す。値引きを減らす。商品の価値を伝え、適正な価格で買っていただく。もう一つは、在庫回転率を高めることです。売場での見せ方を変える。発注量を整える。動きの遅い商品を早めに見直す。必要な商品を必要な量だけ持ち、資金を止めないようにする。

 

つまり交叉比率は、売場と利益をつなぐ数字です。商品をどれだけ売るかだけでなく、どれだけ利益に変え、どれだけ資金を健全に回しているかを教えてくれます。

 

小売業にとって商品は、売場を埋めるためのものではありません。お客様の必要に応え、満足を生み、店に利益を残し、次の仕入れと次の提案につながるものです。交叉比率を見ることは、一つひとつの商品が、その役割を果たしているかを確かめることです。

 

売れる商品を見つけるだけでなく、利益を生む商品を育てる。利益率だけを追うのではなく、商品を動かす。交叉比率は、その両方を考えるための数字です。商品をただ並べる経営から、商品を生かし切る経営へ。その一歩を支えるのが交叉比率です。

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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