笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

在庫は多すぎれば、資金を圧迫します。売れない商品が店頭や倉庫に残れば、お金は商品に姿を変えたまま滞ります。だからこそ、在庫高を見て、在庫回転率を見て、商品が健全に動いているかを確かめることが大切です。

 

しかし、在庫を減らすことばかりに意識が向くと、別の問題が起こります。お客様が欲しいときに、欲しい商品がない。いつも買っている商品が切れている。せっかく来店したのに、目的の商品を買えずに帰ってしまう。そこで見ておきたい数字が「欠品率」です。

 

欠品率とは、販売すべき商品が売場にない状態が、どれくらい発生しているかを示す数字です。計算の仕方は店によって異なります。対象商品のうち欠品していた商品の割合で見る場合もあれば、一定期間のうち欠品が発生した回数で見る場合もあります。大切なのは、「たまに切れる」と感覚で済ませず、どの商品が、いつ、どれだけ欠品しているかを記録することです。

 

欠品が問題なのは、単なる在庫不足では終わらないからです。そこには、本来売れたはずの売上があります。さらに、お客様の期待を裏切るという、目に見えにくい損失もあります。お客様は、欲しい商品がなかったとき、必ずしも不満を口にしてくれるわけではありません。「今日はなかった」と思い、別の店で買う。次からは、最初から別の店へ行く。その小さな行動の変化が積み重なると、客数やリピート率にも影響していきます。

 

たとえば、一日に十個売れる商品が一日欠品すれば、十個分の売上機会を失います。しかし、それだけではありません。その商品を目当てに来たお客様が、他の商品も一緒に買う機会も失われます。さらに、「この店は肝心なときに商品がない」という印象が残れば、次の来店にも影響します。欠品は、棚の空白であると同時に、売上と信頼の空白でもあるのです。

 

とくに、日常的によく買われる商品や、目的買いされる商品の欠品には注意が必要です。食品、日用品、衣料、文具、化粧品、薬、住まいに関わる商品など、業種は違っても、お客様にとって「いつもの商品」「必要な商品」はあります。その商品が切れていると、お客様の失望は大きくなります。

 

一方で、すべての商品を切らさないように大量に持てばよいわけではありません。欠品を恐れて仕入れすぎれば、在庫高が増えます。在庫回転率も悪くなります。売れ残れば、値引きや処分が必要になります。つまり、欠品率を見る目的は、在庫を増やすことではありません。必要な商品を、必要な量だけ、必要なタイミングで持てているかを確かめることです。

 

欠品率を見るときは、商品別、曜日別、時間帯別、季節別に分けることが大切です。週末だけ切れやすい商品はないか。雨の日に急に動く商品はないか。給料日後、年金支給日後、学校行事、地域イベントの前後で売れ方が変わる商品はないか。欠品の発生には、必ず理由があります。そこを丁寧に見れば、発注の精度は高まります。

 

また、欠品は売れ筋商品だけで起こるとは限りません。販売数は多くなくても、お客様にとって欠かせない商品があります。めったに売れないけれど、必要な人には重要な商品。急ぎのときに頼られる商品。ほかでは見つけにくい商品。こうした商品を単純な回転率だけで判断すると、店の信頼を支える品揃えまで失ってしまうことがあります。

 

欠品率を下げるためには、まず発注の仕組みを整えることです。勘だけに頼らず、過去の販売実績を確認する。曜日や季節の変化を加味する。売れ筋商品の最低在庫数を決める。売場に立つ人の気づきを集める。お客様からの「今日はないのですか」という声を記録する。こうした小さな積み重ねが、欠品を減らしていきます。

 

同時に、欠品が起きた後の対応も重要です。ただ「ありません」で終わらせるのではなく、次の入荷予定を伝える。代替商品を提案する。取り寄せや予約を受ける。必要であれば入荷後に連絡する。欠品そのものは失敗でも、その後の対応によって信頼を守ることはできます。お客様は、商品がなかったこと以上に、自分の困りごとにどう向き合ってくれたかを覚えています。

 

欠品率は、在庫管理の数字であると同時に、お客様の期待に応えられているかを見る数字です。商品がない棚には、本来生まれるはずだった売上、会話、満足、信頼が失われています。

 

在庫を減らして効率を高めることと、必要な商品を切らさず信頼を守ること。その両立が、これからの小売業に求められる力です。欠品率は、売り逃しの痛みを見える化し、お客様の「この店なら大丈夫」という期待に応え続けるための数字であり、売り逃しと信頼の損失を見つける数字です。

 

この記事をシェアする
いいね
ツイート
メール
Picture of 笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


新刊案内

購入はこちらから

好評既刊

売れる人がやっているたった4つの繁盛の法則 「ありがとう」があふれる20の店の実践

購入はこちらから

Social Media

人気の記事

都道府県

カテゴリー