笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

しとしとと降る雨が街を包む6月が今日から始まります。湿気が増え、空気が重くなり、どこか気分まで沈みがちな季節です。けれど、この時期こそ商人の腕の見せどころ。見える場所を磨くだけでなく、見えないところの清潔さと心配りが、店の信頼を決める季節です。

 

梅雨の季節は“心”も曇りやすい

 

梅雨が始まると、天候のせいにして人の動きが鈍くなります。お客様の来店も減り、売上も伸びにくい。そんな日が続くと、つい心の中にも曇りがたまってしまうものです。

 

でも考えてみれば、自然はこの雨によってすべてを潤しています。田畑の芽を育て、埃を洗い流し、次の季節に備える準備をしている。つまり、梅雨とは「清めと養いの季節」なのです。

 

商売も同じです。外のにぎわいが減るこの時期こそ、自分と店を整える好機なのです。気持ちの曇りを払い、光を通すような心の掃除から始めましょう。

 

“見えない部分”が店の信頼をつくる

 

雨の日は、売場よりも「見えない場所」が気になります。入口のマット、バックヤードの整理、トイレの清潔さ、レジの中の整頓――。お客様が直接見なくても、その空気は必ず伝わります。

 

ある飲食店の女将さんは、梅雨の時期になると厨房の天井を磨くのだそうです。「お客様の目に入らなくても、気がつく人には伝わる。それに、店の空気が軽くなるのよ」と笑います。

 

見えない部分に、店の品格が宿る。この一カ月は、“陰の掃除”を習慣にしてみてください。心まで清らかになるのを感じるはずです。

 

湿気は“気のめぐり”を鈍らせる

 

湿気が多いと、物理的にも心理的にも“滞り”が生まれます。湿った空気は、売場の活気を奪い、気持ちまで重くしてしまう。だからこそ、換気を意識的に行うことが大切です。

 

朝一番にドアを開け、風を通し、空気を入れ替える。それだけで、店全体のエネルギーが変わります。湿気をためない工夫は、じつは「気を巡らせる」商人の習慣でもあるのです。

 

空気の澄んだ店には、運がめぐります。お客様は“居心地”のよさを敏感に感じ取ります。梅雨の時期こそ、空気づくりを意識したいものです。

 

清潔感は掃除ではなく“姿勢”で決まる

 

清潔感とは、ただきれいに掃除することではありません。それは、「丁寧に扱う」という姿勢の積み重ねです。商品の向き、POPの角度、挨拶の声、スタッフの立ち姿――どれもが店の“清潔感”を構成する要素です。

 

京都のある老舗旅館では、毎朝スタッフ全員で所作の点検を行います。掃除のあとに、笑顔、姿勢、言葉遣いを確認する。「清潔さは、磨く前に整える」と女将は言います。店の清潔さは、まず人の心の整いから。それが、お客様に伝わる最大の“安心”になるのです。

 

雨の日こそあたたかい一言を

 

外が雨だと、人の心は少しだけ冷えます。だからこそ、店の中では“あたたかい言葉”が必要です。「足元の悪い中ありがとうございます」「お帰りの際はお気をつけて」というたった一言で空気が変わります。

 

青森のあるスーパーでは、雨の日だけスタッフが入口に立ち、お客様に傘袋を手渡しながら「雨もまた恵みですね」と声をかけます。買い物帰りの客が笑顔で出ていく姿を見て、「雨の日も悪くない」と思えるようになったと店主は言います。

 

雨の日にこそ、心を晴らす商いを。それができる店は、どんな天気にも負けません。

 

見えない努力が見える信頼を生む

 

6月は、外の景色が曇っても、店の中に光を灯す月です。見えるところだけでなく、見えないところを磨く。お客様の前だけでなく、誰も見ていない場所でも丁寧に働く。その積み重ねが、やがて“信頼の光沢”となって店全体を輝かせます。

 

清潔とは、誠実のあらわれ。誠実に働く人のそばには、必ずよい風が吹きます。雨音を聞きながら、今日も静かに、丁寧に磨いていきましょう。見えないところを磨く人が店を光らせるるのです。

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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