笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

客単価は店の実力を映す数字

売上を伸ばしたい。そう考えたとき、多くの店がまず意識するのは客数です。たしかに、来店客数が増えれば売上は伸びやすくなります。しかし、人口減少が進み、地域によっては来店するお客様の総数そのものが増えにくい時代になりました。そうした中で、店の実力をよりはっきり映し出す数字として見つめたいのが「客単価」です。

 

客単価とは、一人のお客様が一回の買い物でいくら使ってくださったかを示す数字です。売上を客数で割れば出ます。単純な式ですが、この数字の中には、店の提案力、売場の設計力、接客の質、お客様との関係の深さが映し出されます。ただし、ここで注意したいのは、客単価を上げることを単なる値上げと考えてしまわないことです。価格を上げれば、一時的に数字は上がるかもしれません。しかし、それだけでは長続きしません。大切なのは、お客様が納得して気持ちよく買ってくださる内容になっているかどうかです。

 

いくら買ったかではなく、どれだけ提案できたか

 

客単価が上がる理由は、一つではありません。商品の価格が上がったからかもしれませんし、買上点数が増えたからかもしれません。あるいは、主力商品に関連商品が加わった結果かもしれません。つまり、客単価という数字はそれだけを見ても十分ではなく、その中身を分解して見ることが大切です。

 

たとえば、客単価を押し上げる代表的な要素に「買上点数」があります。一人のお客様が一品ではなく二品、三品と買ってくださる店はそれだけで売上の質が変わります。そこには「これも一緒にあると便利です」「この季節ならこちらもおすすめです」といった提案があるはずです。お客様にとって買いやすく、選びやすい売場になっていれば、自然と点数は増えていきます。

 

もう一つ大事なのが「セット率」です。たとえば、シャツを買うお客様にネクタイを提案する。弁当を買うお客様に惣菜や汁物を添える。化粧品を選ぶお客様に、関連するケア用品も紹介する。こうした組み合わせ提案ができる店は、ただ単価が高いのではなく、お客様の目的や困りごとに応える力を持っています。客単価は、その提案力の成果でもあるのです。

 

「関連購買率」も見逃せません。主たる商品だけで終わるのではなく、そこにもう一つ、もう一歩踏み込んだ買い物が生まれているかどうか。ここには店側の都合ではなく、お客様の暮らしや使い方をどこまで想像できているかが表れます。客単価を上げるとは、売り込むことではありません。お客様の満足を深めることだと言ってよいでしょう。

 

名目の売上増に安心せず、客単価の中身を見る

 

いまは物価上昇の時代です。仕入れ価格も上がり、販売価格も見直さざるを得ない場面が増えています。そのため売上高だけを見ると、前年より数字が伸びているように見えることがあります。しかし、その中身を丁寧に見ると実は客数が減っている、買上点数が落ちている、値上げで見かけ上の売上が増えているだけ、ということも少なくありません。

 

ここで客単価の分解が重要になります。単価上昇は価格改定の影響なのか。買上点数は増えているのか減っているのか。セット販売は効いているのか。関連商品の提案は成果を上げているのか。こうした視点で見ていくと、売上の「質」が見えてきます。名目の数字だけではわからない店の実態が、客単価の中に隠れているのです。

 

そして、客単価を見ることは店の姿勢を問い直すことでもあります。この店は、お客様一人ひとりに対して、よりよい選択肢を提案できているだろうか。買って終わりではなく、満足や便利さ、楽しさまで届けられているだろうか。客単価の高い店とは、単に高い商品を売っている店ではありません。お客様の期待に応え、その期待を少し超える提案ができている店です。

 

客数が伸びにくい時代だからこそ、一人のお客様との関係を深めることが大切になります。その結果として客単価が上がるのであれば、それは健全な成長です。値上げに頼るだけではない。買上点数、セット率、関連購買率まで見ながら、何が支持されているのかを確かめていく。そこに次の一手のヒントがあります。

 

客単価は店の実力を映す数字です。どれだけ提案できているか、どれだけ選ばれているか、どれだけ信頼されているか。その答えが、この数字には表れます。売上高の表面だけを見て一喜一憂するのではなく、その内側を丁寧に見つめることです。客単価の中身を読み解ける店ほど、変化の時代に強い店になっていくのです。

この記事をシェアする
いいね
ツイート
メール
Picture of 笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


新刊案内

購入はこちらから

好評既刊

売れる人がやっているたった4つの繁盛の法則 「ありがとう」があふれる20の店の実践

購入はこちらから

Social Media

人気の記事

都道府県

カテゴリー