笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

客数は店の今を映す鏡

売上が落ちてくると、多くの店はまず「何が売れなくなったのか」を考えます。単価の高い商品が動かなくなった、値上げの影響が出た、ついで買いが減った。たしかに、そうした見方も大切です。しかし、売上が下がったときに最初に見ていただきたい数字は、売上高でも客単価でもありません。客数です。

 

なぜなら、売上は「客数×客単価」で成り立っているからです。つまり、売上の変化は、来店する人の数が変わったのか、それとも一人当たりの買上額が変わったのか、この二つに分けて見なければ本当の原因はわかりません。にもかかわらず、客数を見ずに売上だけで判断すると、対策がずれてしまうことが少なくありません。

 

たとえば、来店する人が減っているのに、単価を上げようとして高額商品を増やしても、状況は改善しにくいものです。むしろ店の敷居が高く見えてしまい、ますます入りにくくなることもあります。反対に、客数は変わらないのに売上だけが落ちているなら、商品構成や提案の仕方、関連販売の工夫に課題があるのかもしれません。つまり、客数を見ることは、売上不振の原因を分解し、打ち手を誤らないための出発点なのです。

 

客数が減るとは支持が弱くなること

 

客数が減るというのは、単に「人通りが減った」というだけではありません。店の前を通る人はいるのに入店しなくなったのか、一度買ってくれた人が再来店しなくなったのか、それとも来店頻度が落ちているのか。そこには、店とお客様との関係の変化が表れています。

 

私は、客数とは「店がどれだけ地域から支持されているかを示す数字」だと思っています。どれほど立派な商品が並んでいても、どれほど売場が整っていても、お客様が来なければ商いは成り立ちません。逆にいえば、客数が維持されている店には、来る理由があるのです。安心感がある、相談しやすい、旬の提案がある、行くと何か発見がある。そうした魅力が、客数という数字に表れます。

 

人口減少が進む時代には、客数は放っておいて増えるものではありません。だからこそ、この数字を丁寧に見る必要があります。前年同月と比べてどうか。曜日によって差があるか。時間帯によって強い時間、弱い時間はどこか。催事やフェアの後に再来店が増えているか。ここまで見て初めて、「客数が減った」という現象が具体的な課題として見えてきます。

 

現場では、どうしても忙しさの中で「今日はなんとなく暇だった」「昨日はよく売れた」という感覚で終わってしまいがちです。しかし、感覚は大切である一方で、積み重ねて比較しなければ経営の判断材料にはなりません。数字にして残すことで、はじめて店の変化がつかめるようになります。

 

客数を見る習慣が次の一手を明確にする

 

客数を見る意味は、単に減った増えたを知ることではありません。その先にある改善策を考えるためです。平日は弱いが土日は強いのであれば、平日限定の来店動機が必要でしょう。午前は動くのに夕方が弱いのであれば、夕方に合わせた売場づくりや情報発信を考えるべきです。催事の日だけ客数が増え、その後が続かないのであれば、再来店につなげる仕掛けが足りないのかもしれません。

 

つまり、客数は「次に何をすべきか」を教えてくれる数字です。売上だけを見ていると、「もっと売らなければ」という漠然とした焦りだけが残ります。けれども客数を見れば、「まずは来店を増やそう」「入店率を高めよう」「再来店を促そう」と、手を打つ順番が見えてきます。ここに、客数を最初に見る大きな意味があります。

 

できれば、レジの通過人数だけでなく、入店客数、購買客数、会員客数なども分けて見られると理想です。店の前を通る人はいるのに入店が少ないのか、入店はあるのに購買につながっていないのか、それによって改善すべき場所は変わります。数字を細かく見るほど、店の課題は「感想」ではなく「現実」として浮かび上がってきます。

 

商いは、売上だけを追いかけるものではありません。お客様との関係を育て、その積み重ねの結果として売上が生まれます。だからこそ、最初に見るべきは結果ではなく、その手前にある客数です。何人来てくださったのか。その数字に敏感になることが、店の異変に早く気づき、打ち手を早く打つ力になります。

 

売上高の前に客数を見る習慣は、勘に頼る商いを再現性のある経営へと変えていきます。店の今を映す鏡として、まず客数を見つめること。そこから商いの立て直しも、次の成長も始まるのです。売上不振の原因を見抜く最初の指標、それが客数なのです。

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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