笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

人生を豊かに変える種

人生には、思いもよらぬ出会いがあります。たとえば、旅先でかつての恩師と再会したとき。あるいは、何気なく立ち寄った店で手に取った一冊の本に心を揺さぶられたとき。その瞬間、私たちは「邂逅(かいこう)」という言葉の意味を実感します。

 

「邂逅」とは、“思いがけない出会い”を意味する言葉です。しかしその背後には、ただの偶然ではなく、あらかじめ導かれていたような「縁(えにし)」を感じることがあります。長い人生の旅の途中で、出会うべくして出会う人や出来事がある──そんな不思議な感覚です。

 

森信三の言葉に学ぶ「出会い」の真意

 

教育者であり哲学者でもあった森信三は、多くの人の人生観に影響を与えました。その代表的な言葉に、次の一節があります。

 

「人間は一生のうち、
逢うべき人には必ず逢える。
しかも、一瞬早すぎず、一瞬遅すぎない時に」

 

この言葉は、「縁は偶然ではない」「出会いのタイミングには意味がある」という人生観を示しています。誰に出会うかはコントロールできません。しかし、“いま出会ったこと”には、必ず何かの意味がある。そう考えるだけで、出会いが一瞬にして尊いものに変わります。

 

森信三は「人生二度なし」という言葉でも知られています。これは、「一度きりの人生を悔いなく生きよ」という意味ですが、裏を返せば──「出会いもまた二度とない」ということ。だからこそ、いま目の前の人との関係をどう築くかが、人生そのものを形づくるのです。

 

邂逅を生かすのは受け入れる心

 

邂逅は、いつも準備のないときに訪れます。だからこそ大切なのは、「その出会いを受け入れる心」を持つことです。森信三は「すべての出会いは、自分を磨くためにある」とも説きました。つまり、出会いの価値を決めるのは相手ではなく、自分の受け止め方なのです。

 

ある地方の小さな商店主が、偶然来店したお客様から「もっとこの店の物語を発信すべきだ」と言われたことをきっかけに、ブログを始めた例があります。最初は半信半疑だったものの、日々の発信を通じて店の魅力を再発見し、やがて新しい顧客層が生まれたといいます。この出会いもまさに邂逅──思いがけない出会いが、未来を動かしたのです。

 

邂逅は準備された心に訪れる

 

邂逅は偶然に見えて、実は「心の準備」が呼び寄せるものです。同じ人に出会っても、心が閉じていれば何も始まりません。逆に、日々を丁寧に生き、感謝と誠実をもって人に向き合う人ほど、不思議なほど良き出会いに恵まれます。

 

森信三の「人生二度なし」は、時間の尊さを説くと同時に、出会いの奇跡をも示しています。一度きりの人生だからこそ、出会いの一つひとつを大切にしよう。その積み重ねが、やがて「自分という人間の深さ」を形づくるのです。

 

「邂逅」は、遠い昔の物語や偶然の奇跡ではありません。あなたが今日、誰かと交わす挨拶。何気なく読む一文。そこにもまた、新しい扉が開かれているかもしれません。

 

思いがけない出会いこそ、人生を豊かに変える種です。その種を見過ごさず、育てていくことが、「生きる力」になるのです。

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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