笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

恋をしているとき、人は生き生きとしている。目の前の出来事すべてに意味が宿り、心が敏感に反応してしまう。相手の一言に一喜一憂し、ほんの少しの変化にも気づく。そんな恋のような感受性で仕事に向き合うことができたら──毎日はきっと、もっと輝くことでしょう。

 

先日、日本専門店協会主催の講演会で、スープ専門店「Soup Stock Tokyo」創業者、遠山正道さんの話を聞く機会がありました。そのとき出会ったのが「自分の仕事は、恋のよう」という言葉。遠山さんの曲のタイトルであり、来年、本として出版されるとのこと。楽しみです。

 

そして思ったのが、恋のように仕事をしてこそ、人は誰かを幸せにできるし、自分自身も幸せになれるということ。恋するように夢中になり、恋するように悩み、恋するように成長できます。その先にこそ、本当のやりがいと幸せがあります。

 

心を奪われる瞬間がある

 

恋の始まりは、理屈ではありません。ある日突然、心を奪われるのです。同じように、仕事でも「この世界に関わりたい」「この人を喜ばせたい」と思えた瞬間がすべての原点になります。

 

たとえば、老舗のパン職人が語ってくれた言葉が忘れられません。「パンを焼いていて、いちばんうれしいのは、店の前で子どもが“いいにおい!”と言ってくれるときなんですよ」。その瞬間に、彼は“恋に落ちた”のです。自分の手から生まれるものが、誰かの笑顔に変わる──その感動が次の日の仕事を動かすエネルギーになっています。

 

仕事とは、誰かに心を動かされた人が誰かの心を動かす営みです。恋もまた同じです。だから、「ときめく仕事」は「恋する心」から始まるのです。

 

相手を想うほど仕事は深まる

 

恋が成り立つのは、相手を想うからです。自分中心では続きません。相手の喜びを自分の喜びに変えられるとき、関係は長く続きます。

 

仕事も同じです。お客様や仲間、そして社会を思う気持ちが強いほど仕事は深まり、成果がついてきます。「どうすればこの人に喜んでもらえるか」「何をすれば少しでも楽になるだろうか」と考えて動く人の仕事は、必ず誰かの心を打ちます。

 

恋も仕事も“想像力”が命です。相手の立場に立ち、見えない心を感じ取ります。言葉よりも、態度で伝えます。その積み重ねが信頼という絆を生むのです。

 

うまくいかない日も、好きだから続けられる

 

恋に波があるように、仕事にも浮き沈みがあります。努力が報われない日もあれば、誤解されたり、失敗したりすることもあります。それでも、「好き」という気持ちがあれば、もう一度立ち上がることができます。

 

ある店の店主から聞いた話があります。「一日中、お客様が来ないこともあるんです。でも、朝シャッターを開けるときに“さあ、今日も会えるかもしれない”と思える。その期待があるから続けられるんですよ」。

 

まさに恋と同じです。報われるかどうかよりも、心を込められるかどうかが、続ける力になります。

 

恋も仕事も、「結果」より「過程」が人を育てます。失敗を恐れず、今日できる最善を尽くす。その姿勢が次の“出会い”を呼び寄せるのです。

 

愛するように働く

 

恋の本質は「相手の幸せを願うこと」にあります。自分が満たされるためではなく、相手を笑顔にしたいから尽くすのです。仕事もまた、同じ心で臨むときに真の意味を持ちます。

 

たとえば、福井県のある老舗和菓子店の職人たちは、「お客様の手に届いたときが完成」と語ります。だからこそ、包装紙一枚にも手を抜きません。それはまさに、恋人に手紙を書くような心持ちです。

 

愛するように働くとは、一つひとつの行為に心を込めることです。それが積み重なると、仕事は単なる労働ではなく、「生き方」へと昇華します。

 

“恋するように働く人”は人を惹きつける

 

恋をしている人は魅力的です。目が輝き、姿勢がよくなり、言葉に温度があります。それは仕事でも同じです。「この仕事が好き」「この人を喜ばせたい」と思って働く人には、人を惹きつける力があります。

 

そして不思議なことに、そうした人のまわりには、また新しい縁やチャンスが集まってきます。恋が恋を呼ぶように、情熱は情熱を引き寄せるのです。

 

仕事に“恋心”を持とう

 

私にとって、仕事は恋のようです。相手を想い、努力を重ね、時に傷つきながらも、それでも手放せません。なぜなら、そこに「生きている実感」があるからです。

 

恋は人生を動かす力であり、仕事は人生を形づくる力です。この二つが重なるとき、人は最も美しく、最も強くなれるのです。「恋するように働き、働くように恋をする」──そんな生き方ができたら、毎日はもっと豊かになるに違いありません。

 

遠山さん、ありがとうございました。

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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