笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

今回はまず、皆さんに問いかけたいと思います。

 

「あなたのお店や会社の“使命”は何ですか?」
「あなたにとっての“成果”とは何でしょうか?」

 

日々の忙しさの中で、つい売上や目の前の数字ばかりを追いかけてしまうことがあります。しかし、ドラッカーは私たちに問いかけます。「企業の目的は外にある」と。つまり、答えは会社の中ではなく、お客様や社会の中にあるということです。

 

「ドラッカーは僕の経営の先生であるとともに、我々の進むべき道や企業のあるべき本質的な姿を示してくれる羅針盤のような存在です」と語るのはユニクロの柳井正さん。『柳井正 わがドラッカー流経営』は、彼がドラッカーから何を学び、それをいかに実践してきたかを説いた一冊。ドラッカー入門書としても両書です。

 

ユニクロがなぜ世界的なブランドになれたのか。その理由は、この「問い」を自分たちの経営の中に持ち込み、挑戦と失敗を繰り返しながら実践してきたことにあります。柳井さんは「ドラッカーを読み返して、事業と重なった」と語ります。問いを知識として学ぶのではなく、現実の経営に重ねて血肉化してきたのです。

 

今日はその「ドラッカーの5つの質問」を、柳井さんがどのように実践してきたのか、一緒にたどっていきましょう。

 

1.私たちの使命は何か?

 

柳井さんは言います。
「理想を抱かなきゃ何もはじまりません。本当によい服、今までにない新しい価値を持つ服を創造し、世界中のあらゆる人に提供していきたい」

 

ユニクロは「LifeWear」という普遍的な日常着を創造し、社会全体の暮らしをよりよくすることを使命としました。利益のためでなく「社会価値」を最上位に据えたからこそ、世界ブランドへの道が拓かれたのです。

 

2.私たちの顧客は誰か?

 

柳井さんは言います。
「顧客は自分たちの店に来ない人のほうが多い」

 

だからこそ考えました。どうすれば来ない人をも顧客にできるのか。年齢も性別も国境も越えた「あらゆる人」を顧客と定め、グローバルに市場を広げていったのです。これはまさにドラッカーの「顧客創造」の実践です。

 

3.顧客にとっての価値は何か?

 

柳井さんは言います。
「顧客にとって、企業が提供すべきは『付加価値のある商品』であり、安ければいいという発想ではない」

 

フリース、ヒートテック、エアリズム…。これらはただ安いだけの服ではありません。生活を快適にする新しい価値の創造でした。ユニクロは「潜在的なニーズ」をすくいあげて形にすることで、顧客の心をつかんだのです。

 

4.私たちの成果は何か?

 

柳井さんは言います。
「企業は金儲けのためじゃなく、人間を幸せにするために存在している」

 

ユニクロの成果は、売上や店舗数といった数字だけではありません。生活者の日常をどれだけ快適にできたか。社会にどれだけの価値をもたらせたか。これこそが柳井さんが定義する「成果」なのです。

 

5.私たちの計画は何か?

 

ドラッカーは「計画は具体的な行動を伴うべきだ」と説きます。

 

柳井さんはグローバル展開を進めると同時に、社員一人ひとりに「自分が経営者」という意識を持たせました。「全員経営」です。さらにサステナビリティやデジタル化を積極的に計画に盛り込み、未来へ向けた成長を描いています。

 

あなた自身の羅針盤に

 

柳井さんはこう語ります。
「ただ知識としてドラッカーを読むだけでは意味がない。現実と自分自身を重ねて問い、自分の頭で考えて行動することが大事」

 

ドラッカーの5つの問いは、ユニクロだけのものではありません。中小の商いも、個人の働き方も、同じです。

 

あなたの使命は何ですか?
あなたの顧客は誰ですか?
顧客にとっての価値は何ですか?
あなたにとっての成果は何ですか?
これからの計画は何ですか?

 

この5つの問いを、自分自身の羅針盤にしてみてください。理念と行動が一致したとき、商いは必ず進化します。そしてその先に、社会とあなた自身の幸せが待っています。

この記事をシェアする
いいね
ツイート
メール
Picture of 笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


新刊案内

購入はこちらから

好評既刊

売れる人がやっているたった4つの繁盛の法則 「ありがとう」があふれる20の店の実践

購入はこちらから

Social Media

人気の記事

都道府県

カテゴリー