「安物買いの銭失い」という言葉があります。安いものを安く売るのは安売りではありません。良いものを良いというのも当たり前です。ふだん高値のものを努力して低価格で出せるのが、本当の安売りです。
生活が豊かになっても、消費者は価格には常に敏感です。大手はコスト削減のため、生産現場に手を伸ばしたり、仕様発注で効率のよい低廉商品を開発したりしてきました。それがエスカレートして、今度は小売業どうしでの低価格競争になり、さらに一部の商品の品質不良問題の頻発が重なり、そこから不正商品や嘘つき商品など、お客様に不安を与える事態まで生じてしまったようです。
安さだけでは消費者に安全安心は保障されないだけではなく、価格への不信が、商品の真の価値とは何かが生活の質を規定する重要な条件であることになったのです。これは、まさに新しい商品価値のものさしの発見でした。安さを強く訴えるためには、量産や仕様ではなく「なぜ安いのか」の過程を分かりやすく説明できる体制を求められています。
安さの説明の自信の程度差が、価格以上に購買を決めるということは、企業の基本理念と同時に、商品開発から店舗での提供方法にまで、売場のすべてに改革が求められるということです。これまでに安さによって失われたものは小さくはありません。
生活する側にとっても、真の豊かさとはどういうことかを反省しなければならないでしょう。安さのワケが問題になる時代です。