前回のブログで紹介した「あつた宮宿会」は発足から10年超、熱田の歴史や文化を現代に伝え、地域の活性化に取り組んでいます。その具体的活動の一つが、2015年10月から取り組む「あつた朔日市(ついたちいち)」です。
テーマは
熱田を盛り上げよう!
1月を除く毎月1日の午前9時半頃ごろに、熱田神宮または秋葉山圓通寺で、同会会員が飲食や雑貨、花などを扱う店を20店ほどが出店。チャーターメンバーの老舗4社(きよめ餅、亀屋芳広、妙香園、あつた蓬莱軒)が共同開発した「あつた宮餅」は行列ができる人気商品となっています。
「名古屋学院大学など会員の大学のゼミ生たちがボランティアで手伝ってくれ、卒業後も手伝いに来てくれて、入会した若者もいます。こうした世代を超えた仲間ができるのも会の魅力です」(田中さん)
このほか、毎年11月にはかつての宮宿のにぎわいを取り戻すべく、「宮の浜市」を宮の渡し公園で開催。後述する「名古屋あつたカルタ」によるカルタ大会、熱田にまつわる偉人を通じて歴史を伝える「あつた紙芝居」、和太鼓や獅子舞などさまざまな催しを2014年以来続けており、熱田区主催「あったか!あつた魅力発見市」の会場の一つとして行政とも連携しています。
2020年のコロナ禍中には、各地で行事が中止に追い込まれました。そこで、三密対策を十分に施した上で同年と翌年8月の2回にわたって、「名古屋あつた夢花火」と銘打って15分間シークレットで花火を打ち上げました。
さらに2022年からは新たな夏祭り「あつた夢おどり」を開催。毎年8月、盆踊りをはじめ多数の模擬店やキッチンカーでにぎわい、子どもたちの夏の思い出づくりはもちろん、老若男女が楽しめる夏祭りとなっています。
熱田をもっと
知ってほしい!
こうした屋外イベントに加え、あつた宮宿会では、熱田の歴史と文化の普及にも取り組んでいます。「名古屋あつたカルタ」であり、「あつた紙芝居」です。
熱田に縁のある歴史的人物や場所、行事などをモチーフとする「名古屋あつたカルタ」は、カルタを楽しみながら子どもたちに熱田に興味を持ってもらいたいという思いから、取材と調査に約2年間をかけて制作。熱田を知れば知るほど、勝てるようになるというゲーム性を持ち、「宮の浜市」などイベント時に競技カルタ大会が催されています。
「あつた紙芝居」は日本武尊や織田信長など、熱田に関わる偉人を取り上げ、地元の歴史や文化を知り、愛着を深めてもらう取り組みです。あつた朔日市や宮の浜市で披露するほか、熱田区内7つの小学校の5年生に、授業の一環として読み聞かせを2015年より行っています。
読み聞かせを担うのは、あつた宮宿会副会長の大矢晃敬さん(大家蒲鉾店)と、熱田区広報大使を務める講談師の旭堂鱗林さんほか会の皆さん。「10年間続けてきたのはすごいこと。紙芝居を観た子どもたちが大学生、社会人になって、宮宿会の活動に参加してくれたらうれしいですね」と鈴木さんは振り返ります。
「次世代を担う子どもたちに地元のすばらしさをあらためて学んでもらい、地元を好きになってもらうことが未来の地域振興には不可欠。そして、その子どもたちが大人になったとき、さらに若い世代にそれ伝えていく。この連鎖をつくることがあつた宮宿会の活動目的です」(田中さん)
こうした思いは「設立10年を経た今日も変わることがない」と田中さん。定例会、役員会、朔日市と最低でも月に3回時間を共にし、盃を酌み交わします。こうしたコミュニケーションの深さにこそ、世代や立場を超えて志が受け継がれていく理由の一つがあるようです。