クレージーな人たちがいる。
反逆者、厄介者と呼ばれる人たち。
四角い穴に丸い杭を打ち込むように、物事をまるで違う目で見る人たち。
彼らは規則を嫌う。
彼らは現状を肯定しない。
彼らの言葉に心を打たれる人がいる。
反対する人も、称賛する人もけなす人もいる。
しかし、彼らを無視することは誰にもできない。
なぜなら、彼らは物事を変えたからだ。
彼らは人間を前進させた。
彼らはクレージーと言われるが、私たちは天才だと思う。
自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが、本当に世界を変えているのだから。
これはあまりにも有名なある企業のテレビCMのコピーです。白黒の映像で構成され、アルベルト・アインシュタイン、ボブ・ディラン、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア、リチャード・ブランソン、ジョン・レノン(とオノ・ヨーコ)、バックミンスター・フラー、トーマス・エジソン、モハメド・アリ、テッド・ターナー、マリア・カラス、マハトマ・ガンディー、アメリア・イアハート、アルフレッド・ヒッチコック、マーサ・グレアム、ジム・ヘンソンと(カエルのカーミット)、フランク・ロイド・ライト、パブロ・ピカソという20世紀に活躍した17人の象徴的人物が登場します。
コマーシャルは最後に、少女があたかも何かを願うかのように閉じていた眼を開く映像に続き、「Think different.」というコピーが映され、その企業のロゴが浮かび上がります。自らが創業した企業を追い出され、危機に再び経営を託された経営者自らがナレーションをあて、商品が一切登場しないという異例のコマーシャルでした。
1997年に放映されると大きな反響を呼び、赤字続きで倒産寸前だった同社を黒字に引き上げ、その後の躍進の足掛かりとなりました。私もこのコマーシャルに衝撃をおぼえ、同社の商品ユーザーとなりました。経営者とはスティーブ・ジョブズ、企業とはApple Computerです。
なぜ、私を含め当時の人たちはこのコマーシャルに共感したのでしょうか。それは「6W1H」に集約される、価値を伝える上で重要な要素のうちで、最重要なポイントに焦点を当てているからです。
「6W1H」とは、Who(誰が)、Whom(誰に)、What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)、How(どのように)であり、もっとも重要なのがWhy(なぜ)なのです。AppleのコマーシャルはWhy(なぜ)のみに焦点を当て、ほかを手放したからこそ、多くの人の心をつかんだのでしょう。
このように、手放さなければイノベーションは起こせません。限られた人・物・金、さらに時間という資源を最大限に生かすには、「Why」という最も根源的な問いに集中しましょう。「死せる者を埋葬して、初めて復活はなされる」とはドラッカーの言葉ですが、まさに選択と集中の重要性を言い当てています。
さて、あなたにとって最も大切なものは何でしょうか。それ以外はすべて手放すところから事態は好転しはじめます。