先日、連載コラムを書かせてもらっているビジネス誌の編集担当者に、ご長男が生まれたことを知り、お祝いに3冊の絵本を贈りました。いずれも生後3年間のマイルストーンになるような歴史的名著。これらを足掛かりにたくさんの絵本を読んであげてください。
1歳児向けとして『ぞうのボタン─字のない絵本─』(うえののりこ/冨山房)、2歳児向けとして『はらぺこあおむし』(エリック・カール/偕成社)、そして3歳児向けとして選んだのが『てぶくろ』(エウゲーニー・M・ラチョフ絵/福音館書店)でした。
〈おじいさんが森の中に手袋を片方落としてしまいます。雪の上に落ちていた手袋にネズミが住みこみました。そこへ、カエルやウサギやキツネが次つぎやってきて、「わたしもいれて」「ぼくもいれて」と仲間入り。手袋はその度に少しずつ大きくなっていき、今にもはじけそう……。最後には大きなクマまでやって来ました。手袋の中はもう満員! そこにおじいさんが手袋を探しにもどってきました。さあ、いったいどうなるのでしょうか?〉
じつはこの話、ウクライナの古い民話です。何世紀も昔から語り継がれるウクライナ民衆の精神文化を象徴するものです。
ロシア軍の侵攻が始まったのが2024年2月24日のことでしたから、彼の地では逃げ惑う人々がきっと多くの手袋をなくしたことでしょう。本書のテーマは、さまざまな出自、背景を持つ者たちの共生にあります。
ウクライナの子どもたちが、心穏やかにこの民話を楽しめる日が早く訪れることを願います。もちろん、ロシアや世界の子どもたちにも……。