笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

先日は、地元の商工会議所でパネルディスカッションのコーディネーターを務め、「船橋商業の未来を語る」をテーマに、二人の事業経営者それぞれの未来戦略を語っていただきました。その柱の一つとして立てた設問が「外国人従業員の採用と戦力化」です。パネラーの1社は飲食店経営、もう1社は電気設備施工会社経営ですが、2社ともに外国人従業員が大きな戦力となっていました。

 

厚生労働省が1月31日に発表した「外国人雇用状況の届出状況まとめ」によると、日本で働く外国人が2024年10月時点で230万人となり、前年に比べて12.4%増えています。日経電子版の図表にも見られるように、増加幅は25万人で集計開始の2008年以降で最大。職場で外国人とともに働くことはもはや珍しいことではなくなりました。

 

 

同発表によると、外国人は就業者全体の3.4%を占め、伸び率を産業別に見ると、最も高かったのが「医療・福祉」で28.1%増。次いで「建設業」が22.7%増、「宿泊・飲食サービス業」が16.9%増。人数で見ると、製造業が59万人で最大となり、サービス業(35万人)、卸売・小売業(29万人)が続いています。

 

在留資格別に見ると、製造業の技術者や介護人材などを含む「専門的・技術的分野」が71万人と20.6%増えて首位。永住者や日本人の配偶者など「身分に基づく在留資格」を初めて上回りました。特に一定の専門性を持つ外国人を受け入れる特定技能が20万人と49.4%増え、2019年創設から一貫して増え続けています。また、日本で技術を学ぶ技能実習も47万人で14.1%増えました。

 

国籍別に見ると、ベトナムが57万人と全体の24.8%を占め、次いで中国が40万人、フィリピンが24万人と続いています。厚生労働省の担当者によると、「東南アジアの労働者は受け入れ制度や治安といった要素を韓国や台湾などと比較して、日本を選択している」としています。

 

少子化により生産年齢人口(15歳以上65歳未満)が減り続ける日本にあって、彼らの力は今後ますます欠かせなくなるでしょう。国の予測では、生産年齢人口は2065年には約4,500万人となる見通しで、これは2020年と比べ約2,900万人の減少となります。

 

ところで、いつまで彼らは働く場所として日本を選んでくれるでしょうか。それを保証する材料は今のところありません。国際的に外国人労働者の獲得競争は激しくなっている一方、日本は長年賃上げが進まなかったほか、足元の円安傾向も逆風になっています。行政手続きから生活環境に至るまで、受け入れ体制の整備は遅れているのが現状のようです。

 

そもそも、人は何を求めて働くのでしょうか。パネラーの一人は「日本人、外国人に関わらず、経営者の使命は従業員の“5リッチ”を叶えること」と言いました。5リッチとは次の5つを指します。

 

(1)健康の豊かさ
(2)経済の豊かさ
(3)時間の豊かさ
(4)家族・仲間との豊かさ
(5)心の豊かさ

 

これらは“幸せ”の定義であり、働く目的です。彼が目指す経営の在り方でもあります。これらをバランスよく伸ばしていくところに経営の使命があるということです。従業員は、人にとって金銭よりも大切な資源である“時間”を勤務先に投資していることを忘れてはなりません。彼らの投資にこたえられない企業で、誰も働きたくはないのです。

 

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笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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