笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

◆今日のお悩み
東京都では4月からカスハラ防止条例が施行され、国でも企業に防止策を義務づけようとしています。何から取り組んだらいいのでしょうか。

 

2010年代前半頃から悪質なクレーマーに対して「カスタマーハラスメント(カスハラ)」という言葉が使われ、社会問題として広く認識されるようになりました。厚生労働省はカスハラを次のように定義しています。

 

「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態度により、労働者の就業環境が害されるもの」

 

要はクレームが悪質化したものであって、言葉による攻撃、肉体的接触、精神的圧迫、性的カスハラなどがあります。企業としては無論、上司も部下を毅然として守らなければなりません。

 

もっともクレームは本来、顧客の合理的かつ正当な権利行使でもあります。企業としても、クレームは自分たちでは見えにくい気づきを与えるものです。真摯で誠実な対応を心がけることで、企業経営に改善の機会を与えてくれます。さらに、適切な対応ができればクレーム客は生涯顧客ともなりうるのです。

 

カスハラの多くはクレーム対応の稚拙さにより、クレームをカスハラへとエスカレートさせてしまった結果です。したがって、クレーム対応力の向上が先であり、それでも起こり得るカスハラにはマニュアルが必要となります。

 

もっとも、マニュアルだけでカスハラは防止できません。顧客への姿勢が誤っていたら、決めごとは絵に描いた餅に終わります。正しい姿勢を示す、顧客にも従業員にも愛される二つの店があります。

 

原則1 顧客は常に正しい
原則2 たとえ顧客が間違っていると思っても、原則1を読み返せ

 

店頭に置かれた巨石にこう刻んでいるのは、米国東海岸の人気スーパーマーケット、スチューレオナルド。米国経済誌「フォーチュン」の働きたい会社特集のトップ100の常連としても知られています。

 

 

一方、店頭に次のように掲げるのはイタリアの食を通じて上質なライフスタイルを提案する総合フードマーケット、イータリーです。買い物、食事、学習を一つの店舗で体験できます。

 

1.顧客はいつも正しいわけではない
2.イータリーもいつも正しいわけではない
3.違いを認め合い、調和を築く

 

これら二つはまったく逆の顧客観に立っているように思えます。いったい、顧客は正しいのでしょうか、正しくないのでしょうか。

 

日本では長らく顧客は「神様」とされてきました。それがカスハラの昨今は「敵」扱いです。否、顧客と事業者はどちらが上でも、どちらが下でもない対等な関係にあります。

 

そこにあるべきは、人間どうしの深いコミュニケーションと、信頼でなければなりません。つまり顧客は、ときに意見を違えても調和でつながる「友」であるべきなのです。

 

このとき、顧客は常に正しい。なぜなら、すべてのビジネスは顧客なしでは成立しないからです。クレームをカスハラ化させない顧客認識こそ、最良のカスハラ防止策だと二つの店が教えてくれます。

 

#お悩みへのアドバイス

お客様は常に正しくはない
商人も常に正しくはない
相違を認めて調和をはかるとき
お客様は常に正しい

 

※このブログは、東海道・山陽新幹線のグリーン車でおなじみのビジネスオピニオン月刊誌「Wedge」の連載「商いのレッスン」を加筆変更してお届けしています。毎号、興味深い特集が組まれていますので、ぜひお読みいただけると幸いです。また、オンラインメディア「Wedge ONLINE」でもお読みいただけます。

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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