エンゲル係数とは、一世帯の消費支出の中に占める食費の割合。ドイツの統計学者エルンスト・エンゲルが提唱した「エンゲルの法則」によると、食費は生命維持にかかわるため簡単に削ることができないとされ、収入が上がる(下がる)ほど消費支出に占める食費の割合は低くなる(高くなる)というものです。それゆえ「貧困指標」とも言われています。
日本がまだ貧しかった戦後間もないころは60%台だったエンゲル係数は、経済成長によって生活が豊かになるとともに低下していきました。2005年には22.9%という最低値を記録しています。
しかし2005年を境に上昇に転じ、現在は28%を突破。いまや日本は主要7カ国で首位となっています。日本は貧しい国になったのでしょうか。一概にそう断言するのは正しくありません。いくつかの要因が考えられます。
一つには、共働き世代の増加です。専業主婦という言葉は死語となり、いまや共働き世帯は多数派になりました。共働き世帯の場合、炊事に多くの時間をかけられずに調理食品や惣菜の購入、外食が多くなるのは必然。食費に占める割合が高くなり、結果としてエンゲル係数が上昇します。
もう一つは、日本社会の高齢化です。若い世代に比べ高齢世帯のエンゲル係数は高いと言われています。リタイア後の収入は年金、預貯金の取り崩しがメインとなります。収入が減少しても消費支出も減少しますが、食費は生活の基本であるため大きくは減らせないことから、エンゲル係数が高くなるというわけです。
大切にしたいのはエンゲル係数の高低ではありません。一食一食が健康的で、心身の状態を高める食であることが人生の基礎です。食は命であり、食は愛です。そうした食事を工夫したいと思います。