年末に届いた郵便物の中に入っていたのは「ありがとうございます。」と記されたポチ袋。移動スーパー「とくし丸」1200台達成を記念したかわいらしいオリジナル・マグネットが三つ収められていました。ポチ袋には、スタッフ一同のメッセージとしてこう書かれています。
「とくし丸へのご協力、いつもありがとうございます。皆さんのおかげで2024年11月に稼働台数1200台を達成することができました。2012年にたった2台でスタートした移動スーパーとくし丸も、12年の時を経て、やっとここまで辿り着きました。もちろん、とくし丸の訪問を待ってくれているお客さんが、まだまだたくさんいらっしゃいます。これからさらに2000台を目指して、日々精進していきます。全国の『買物に困ってるの』という方々を、マグネットの如く、とくし丸というキーワードで繋げられるよう一丸となってガンバリマス。」
このメッセージを読み、書棚から一冊の本を取り出して読み直しました。とくし丸創業者、住友達也さんの著作『とくし丸のキセキ』は彼が創業時から書き続けたブログを編集、その軌跡と奇蹟を記したものです。刊行は2018年8月。当時の稼働台数は300台少し。それから6年ほどで4倍に成長しています。
その成長の過程について、2022年に1000台を突破したときに記したブログ「さらに進め、とくし丸」をご覧ください。ここでは住友さんの著作の中から、私が付箋をたてた部分をいくつか紹介してみます。そこに、とくし丸の本質が感じられます。
「とくし丸は、新しい『メディア』だと思っている。食品の移動販売を通じて、直接顔を合わせる人たちのネットワークができる。その接着剤になるのが販売員だ」(66ページ)
「とくし丸を思いついたキッカケは、この母親の話からだった。『ここら辺みんな、買い物意見で困っとーわよ』。かく言う母も『買い物難民』ギリギリの人だった。最近では、さらにギリギリからズッポリに変化してきている」(68ページ)
「時代は間違いなく、『数より質』に移りつつある。もはや、大型店が必ずしも強い時代ではない。とくし丸というコンパクト店で、大型店に勝てる商品とサービスを提供していけばいいのだ。載せていなかった商品は、『3日後、次来る時に持ってきます』という『御用聞きサービス』が、僕たちの最大の武器になるのだ」(70ページ)
「週に2度、直接顔を合わせ、会話を交わし、健康状態までも知り得るとくし丸にできることは、きっとたくさんあるだろう。僕たちは、ただ単に『商品を売る』だけの仕事をしているわけではない。お年寄りの情報を、誰よりも知り得る立場にいるのだ」(75ページ)
まだまだ紹介したい部分があるのですが、ぜひ本書を手にとってみてください。そこには、これから、というより本来の小売業の使命、超少子高齢・人口減少時代の地域創成、シニア市場の可能性など、本質的、今日的な気づきがたくさんちりばめられています。
最後に、とくし丸のホームページから「とくし丸」を表現するキーフレーズを紹介します。それぞれの意味が詳しく書かれているので、ぜひ覗いてみてください。
究極のセレクトショップです。
おばあちゃんのコンセルジュを目指します。
御用聞きでもあるのです。
全てのお客さんに対面販売します。
売りすぎません、捨てさせません。
街の毛細血管となります。
インフラを創っています。
需要拡大市場で成長します。
地域連合を創るためのキーワードです。
見守り隊、でもあります。
個人商店と共存したい、と考えます。
販売パートナーが、主役です。
薄皮を重ねることを惜しみません。