お歳暮、クリスマスなど12月は贈り物を贈ったり、いただいたりする機会が増えるもの。贈り主の思いの込められた中身はもちろんですが、仕事柄、ほかにも気になることが二つあります。梱包されている段ボール箱や外箱、そして配達してくれる業者さんです。今回は段ボール箱にまつわる話です。
何の変哲もないただの箱の意味
トイザらスのオンライン通販で注文すると送られてくる段ボール箱が話題です。店のロゴもなければ、気の利いたデザインもないただの箱。しかし、それが素晴らしいと小さな子を持つ親御さんから好評だそうです。
もし、段ボール箱に「R」が逆になった例のロゴが印刷されていたら、まだ文字を読めない小さな子でも、それがトイザらスのものだと気づいてしまうかもしれません。イブの深夜に子の枕元に置き、クリスマスの朝にサプライズさせたい親や保護者にとって、トイザらスの気遣いはまさにプライスレス。そして、その段ボール箱には「配達ドライバーの皆さまへ」と次のように印刷されています。
「この中の商品は、お届けするお子様お一人お一人の笑顔を思い、まごころを込めて梱包させて頂いております。どうか丁寧にお取り扱い頂き、配達をお願い致します」
同社広報によると「きっかけは数年前、クリスマスにお子様たちにわからないように届けてほしいといったお客様の声でした。お子様の夢を守るためのみなさまの努力のお役に少しでも立てていたらうれしいです」とのこと。まさに、お客様の声は宝物です。
贈り物には贈る人、贈られる人の二人のお客様がおり、双方に満足や感動を届けるのが店の務めです。この場合、前者は親や保護者であり、後者は子どもたちです。親や保護者にとってクリスマスギフトのいちばんの目的は子どもたちの笑顔。自社のこれ見よがしの自己顕示ではなく、本当に求められるものを優先したエピソードです。
段ボールを「手紙」にした商人
ときは2020年4月、猛威を振るう新型コロナウイルス拡大を防ごうと、東京をはじめ主要都市に緊急事態宣言が発令されたときのこと。東京・浅草、日本一料理用品が揃う商店街、かっぱ橋道具街にある料理道具専門店「飯田屋」店主、飯田結太さんもお客様と従業員の健康を守るため、1カ月間にわたって店を閉じました。
そこで彼はオンライン通販の強化を図ります。もちろん、ホームページの作りこみやSEO対策にも取り組みましたが、彼はもう一つのことに時間と情熱を傾けました。お客様に発送する段ボール箱につく四辺のふたの内側に、一つひとつお客様へのメッセージを記したのでした。注文のお礼、商品の特徴、最近感謝したできごとなど、まるでそれはお客様へのラブレターのようでした。
コロナ禍で外出もできず、自宅でくさくさした気分になっていた人も多かったことでしょう。そんなときに飯田屋から注文の品が届き、段ボールを開けると、手書きのメッセージが目に飛び込んでくるわけです。こうした心遣いに心を動かされた人は少なくなく、飯田屋の段ボールメッセージは瞬く間にSNSで話題になり、新たなお客様からの注文へとつながっていったそうです。
この二つの事例からわかるように、お客様は段ボール箱一つにも店のお客様を思う心を見いだします。まさにGod is in the details、神は細部に宿ります。あなたの店の段ボール箱に、こうした細やかな心遣いはあるでしょうか。