笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

SNS全盛の時代になっても、地域に根ざす事業者にとってチラシは有効な広告媒体。否、いかなる媒体であろうと、そこで伝えるメッセージに魅力がなければ広告はお客様の心を動かさないでしょう。

 

そこで、日本新聞折込広告業協会が主催する「J-NOA新聞広告大賞」受賞作品の中から、価格以外の価値を伝える優秀作品を紹介しましょう。ぜひ、他の受賞作品とともに、あなたの広告宣伝のヒントとしてください。

 

湯前畳店(熊本県熊本市)

 

表面に記された手書きによる便りの前半では、梅雨の到来を伝えつつ寝ゴザのある暮らしの快適さを伝え、後半では値上げへの理解を求めつつ事前予約をすすめる文面が秀逸。長文だがつい読んでしまうのも、商売っ気を感じさせない「手紙」というスタイルゆえでしょう。

 

裏面では畳表替えを商品ごとに特徴をわかりやすく説明。さらに、人柄の良さを感じさせる店主の顔写真が需要と安心感をかきたてます。手書きチラシの良さが伝わってくる作品です――ブロック賞(九州・沖縄)受賞作品

 

浪岡時好堂(岩手県二戸市/眼鏡店)

 

事業承継者である長男の結婚と孫の誕生を大きく報告し、一族と従業員27人の続柄と仕事内容、近況報告で構成。プライバシー保護優先のいまどき、ここまで振り切った情報公開に脱帽します。

 

商品の前に人柄を売ることが地域での繁盛の鉄則ですが、このチラシを楽しみにする人は多いことでしょう。まさに専門店にとって「人」こそ商品であり、かけがえのない事業資源であることが伝わってきます。チラシはお客様へのラブレターであり、お客様に感謝と初売りを告げる年賀状でもあるのです――企画アイデア賞受賞作品

 

たかき(山形県天童市/スーパーマーケット)

 

紙面全体を特売情報で埋め尽くすのがスーパーマーケット折込広告の常識でありながら、このチラシは表面の2分の1近くを白紙としています。その目的は自社アプリへの会員登録促進にあります。登録すると、チラシでは隠された特売情報が見られるという仕掛けとなっているのです。

 

自社アプリは顧客との継続的な接点をつくり、リピート率の向上とロイヤルカスタマーを増やすメリットがあります。そのためにチラシを白紙にしている点が画期的です――デジタル連携賞受賞作品

 

栃の葉葬儀社(栃木県宇都宮市)

 

数字は提案に具体性を持たせ、人の心を動かし、記憶にとどまる効果を持ちます。裏面では、新聞購読率の高い50代に向けて「あと、5,904分」と大書することで、別居の親と過ごせる残り時間を想像させ、葬儀の事前相談の必要性、葬儀について考える必要性を訴求しています。

 

また、別バージョンの裏面では、喪主(施主)をつとめて後悔したことはあるかと問うことで、後悔しない葬儀社選びを勧めています。笑顔のおばあちゃんの写真に添えられた「相談しよう。葬しよう。」というコピーも惹きつけます――企画アイデア賞受賞作品

 

山梨パン工房モンマーロ(山梨県甲州市)

 

商品の特徴をわかりやすく表現したイラストが目を引きます。表面では月ごとの新作、裏面では日替わりが掲載され、広告が折り込まれる月末が待ち遠しい人たちも多いに違いないでしょう。とかく客数が週末に偏りがちな業種ですが、日替わりを訴求しているから平日も多くの来客があることでしょう。

 

「パンでお客様を幸せにしたい。これを実現するために、モンマーロに来店されるお客様にいつも楽しさを提供したいと思っています」と、常に新しいものに挑戦する姿勢を感じさせます――ブロック賞(中部・北陸)受賞作品

 

東京メガネ(東京都世田谷区)

 

歳を重ねると誰にも起こりうるものの、人に相談しづらい「聴こえ」の悩み。そうした親世代に加え、子孫世代それぞれの「声」を紹介することで双方の関心を呼び起こし、家族で補聴器について話し合えるきっかけを演出しています。

 

さらに専門技能を有した専門家が親身に悩みに向き合う姿勢を感じさせる構成で、来店のハードルを下げている点も巧みです。不便、不満、不快といった「不」を解消するところに商機があります。

 

ドコモショップ東仙台フォレオ店(宮城県仙台市)

 

商品写真なし、すべて手書きで通す「手紙」のような親しみのある広告。「私 ドコモショップ東仙台フォレオ店 店長の佐藤と申します」と発信者を名乗っている点に責任感を感じさせます。

 

「スマホを使いこなせるか不安」と躊躇する中高年の“ガラケー”ユーザーに対して、「このお手紙を受け取った方だけに今なら」と特定機種を「0円」のキャンペーン価格で提案し、その使いやすさと月々の基本料金をわかりやすく説明している点が見事です。

 

 

以上、いかがでしたでしょうか。いずれからも、発信者の熱意とお客様に価値ある情報を伝えたいという思いが感じられます。広告とは「幸告」なのです。「J-NOA新聞折込広告大賞2024」受賞全作品はこちらからご覧いただけます。次回は2026年、皆さまからの応募をお待ちしています。

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笹井清範

笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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