企業信用調査会社、帝国データバンクの調べによると、飲食店の倒産が過去最多ペースで発生しています。2024年1-9月の倒産件数は650件となり、前年同期比で16.5%増加。このままのペースで推移すると通年の件数は、過去最多の2020年(780件)を上回って870件前後となる見通しです。
650件を業態別にみると、居酒屋を主体とする「酒場、ビヤホール」が160件で最も多く、ラーメン店などの「中華料理店、その他の東洋料理店」(117件)、「西洋料理店」(90件)、「バー、キャバレー、ナイトクラブ」(70件)、「日本料理店」(53件)が続いています。深夜時間帯での営業店舗が多い「酒場、ビヤホール」と「バー、キャバレー、ナイトクラブ」を合わせると230件となり、全体の35.4%を占めています。
都道府県別では、東京や大阪、兵庫、愛知など大都市圏で増加が目立っており、特に東京と大阪で全体の29.8%を占めています。
「夫婦で1店舗を経営」といった小規模事業者が多い飲食店業界は、引き続き食材・光熱費の高騰や人材確保・維持のための賃上げなどで収益が圧迫されています。さらに、価格転嫁率(2024年7月「帝国データバンク」調査)は36.0%と、全業種(44.9%)を大きく下回っています。
アフターコロナで競争も激化するなか、値上げに踏み切るか否か、中小クラスを中心に倒産や廃業の増加は避けられないと見られています。このままでは、吉田類さんが放浪してきた酒場も、太田和彦さんが探訪してきた居酒屋も、淘汰の波に呑み込まれていくでしょう。
「淘汰の波」という言葉を使いましたが、これは不必要なものや不適当なものを除き去る現象、または環境に適応した生物が子孫を残して他が滅びる現象を指し、企業の倒産件数が増加する様子を指す言葉として用いられます。
それらの店は環境変化に「不適当」であっても、その存在が「不必要」ではないはず。環境に適応するために、値上げすることは必須。そのとき重要なのは、値上げの理由を共感してもらえる顧客との関係性であり、それを人は「絆」と呼びます。絆は一日にしてできるものではありませんが、これまでまっとうに商売してきた店には必ずあるものです。
あなたの店に、お客様との強い絆はありますか。
なお、本文の内容と掲載写真の店は一切の関係はありません。