笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

スリランカ出張からの帰りの便、9時間のフライトで観たのはもう何度も観てきたものでした。ロバート・デ・ニーロとアン・ハサウェイというオスカー俳優が共演する映画「THE INTERN」(邦題「マイ・インターン」)です。

 

舞台はニューヨークのブルックリン。アパレル通販サイトで成功し、結婚してプライベートも充実するジュールズ(アン・ハサウェイ)の部下として、シニア・インターンのベン(ロバート・デ・ニーロ)が雇われたことから物語は始まります。

 

 

最初は40歳も年上のベンをうとましく感じるジュールズでしたが、いつしか彼の的確な助言が会社の雰囲気を変えいき、彼女自身もベンを頼るようになります。やがて、ジュールズはプライベートで思わぬ危機を迎え、大きな選択を迫られます。

 

そんな彼女に対して、ベンは豊かな人生経験で的確なアドバイスを与え、彼のシンプルな生き方がジュールズを変えていくという物語です。詳しくは映画を観ていただきたいのですが、主人公の二人から3つの“良きもの”を得ました。

 

「ハンカチって何のためにあるの?」

 

ベンの自宅に居候することになった若い同僚がベンのワードローブに興味を持ち、ハンカチを持つ習慣がない彼はこう聞きました。「ハンカチは貸すためにあるんだよ」とベン。その言葉のとおり、ベンはジュールズが悲しみに涙すると、そっとハンカチを差し出します。

 

監督はこのシーンで、自分以外の誰かを思いやる“利他の心”の大切さを伝えようとしているように感じました。ハンカチは“利他の心”の象徴であり、それを携えていることが大人のたしなみである、と。

 

次第にベンへ信頼を寄せるようになったある晩、二人きりのオフィスでピザとビールを楽しみながら、ベンのFacebookのプロフィル登録をジュールズが手伝うシーンがあります。好きな言葉を問われると、彼は答えました。

 

「You’re never wrong to do the right thing.(正しい行いは迷わず行うこと)」

「すてきね、あなたの言葉?」とたずねる彼女。

「まあ、、、、少し前にマーク・トウェインが言っていたかも」

 

このシンプルな言葉こそ、じつは物語の重要なモチーフであり、彼の生き方でした。いえ、シンプルだからこそ強いのだと監督は教えてくれます。

 

そして最後の気づきは、ある朝の慌ただしいひととき、自宅へ宅配してもらった自社商品の洋服、そのたたみ方や包装のありようを、ジュールズがチェックするシーンです。その心なさを気に留めたジュールズは、すぐにベンの運転で発送倉庫へ向かい、スタッフたちにあるべきたたみ方、包み方を熱心に教えます。

 

自分が顧客であったら、どうされたら嬉しいか――この視点を忘れずに徹底するからこそ、ジュールズは起業を成功させたし、経営者としてふさわしいと監督は伝えています。

 

・他者を思いやる利他の心
・正しい行いを迷わず行う勇気
・顧客視点に立った最後のひと手間

 

私がこの映画から教わったことは以上です。女性にとっては、ロバート・デ・ニーロは魅力的でしょう。私も、あんなふうに年をとりたいと思います。男性にとっては、アン・ハサウェイはキュートです。「プラダを着た悪魔」のときに増して、成熟した魅力を感じます。

 

そんな魅力もさることながら、生きかたや仕事への向き合いかたを教えてくれる一作。たとえば、あなたがお客様に商品をお渡しするとき、たとえば、あなたがお客様にサービスを提供するとき、主人公二人のやりとりを思い出してみたい映画でした。

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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