「起業家は、変化を当然かつ健全なものとする。彼ら自身は、それらの変化を引き起こさないかもしれない。しかし、変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する。これが、起業家および起業家精神の定義である」
冒頭の文章はドラッカーが『イノベーションと起業家精神』で説いた起業家および起業家精神の定義として有名です。「変化」を是として機会に活かしていける人が起業家だと経営学の大火は言います。
先日、東京都中小企業振興公社が運営する創業支援施設「TOKYO創業ステーション 丸の内 Startup Hub Tokyo」で起業を志す方々に対して講演する機会がありました。「心に刺さるご講演ありがとうございました」「ご紹介いただいた事業者の皆様のエピソードやそこから得られる知見の一つ一つが起業を後押し・勇気づけられる内容でした」とうれしい感想をいただいています。
ここでは、講演で紹介した4人の起業家の経歴を披露します。どこにでもいる彼ら、彼女が業を起こし、それを育む原動力、それは情熱です。
根本泰昌さん
世界に一つだけの紅茶により
紅茶のあるライフスタイルを提案し、
紅茶で人と地域を元気にする
企業名/ワイズティーネットワーク㈱
業種/紅茶製造販売業、紅茶教室運営、オリジナル紅茶製造
1974年宇都宮市生まれ。大学卒業後、大手製薬会社の大塚製薬㈱に入社、ブランドマネージャーなど歴任。2006年、ワイズティーネットワーク㈱設立。シニアティーコーディネーターの資格を持ち、紅茶専門店経営、地域や企業のオリジナル紅茶をプロデュース。全国各地での講演や大学での講義なども行う。
原英洋さん
歴史ある業界を覆う
硬直した旧弊を革新して
顧客よし、作り手よし、店よしを追求
企業名/㈱ふらここ
業種/オリジナルブランドによる節句人形の企画・制作・販売
1963年東京生まれ。祖父:原米洲(人間国宝)、母:原孝洲(女流人形師)。慶応義塾大学経済学部卒業後、大手出版社・集英社に入社。1987年父親の急逝により、家業である人形専門店に入社。1988年専務取締役就任。2008年に独立して㈱ふらここを創業。女性活躍推進活動に注力し、2015年に経済産業省『ダイバーシティ経営企業100選』の認定を受ける。
伊藤康一さん
アマゾンとは一線を画する
独自路線を
小さく始めて大きく育てる
企業名/伊藤製作所
業種/オリジナルデザインのTシャツ、ハンコの企画製造販売
1974 年生まれ。愛知県岡崎市出身。大学進学で上京すると同時にボクシングを始め、大学3年でプロボクサーになるも、2勝3敗の成績で引退。その後、スポーツクラブやファミリーレストラン、アルバイト求人情報誌「フロムエー」の制作などアルバイト生活を送る。2004年、30歳の時にTシャツ販売のネットショップで起業し、人気を博す。2008年、東京・谷中に実店舗「戦うTシャツ屋 伊藤製作所」オープン。2011年、「邪悪なハンコ屋 しにものぐるい」を実店舗とネットショップでオープン。
中村朱美さん
国産牛のメニューを
100食限定の希少性でヒット
新たな働きかたと儲けかたを創造
企業名/㈱minitts(佰食屋)
業種/国産牛ステーキ丼飲食店
1984年京都府亀岡市出身。京都教育大学卒業後、学校法人大和学園へ就職、5年半の勤務の中で広報を担当する。2012年9月に㈱minittsを設立、代表取締役に就任する。現在は1男1女の母でもある。「食べることが大好きで、料理が得意な夫との出会いは、ホテルのバイキングでした」
ドラッカーはこうも記しています。「イノベーションほど、自らの強みを基盤とすることが重要なものはない。イノベーションにおいては、知識と能力の果たす役割が大きく、しかもリスクを伴うからである」。
彼らもまた自らの強みを生かし、それを鍛え、基盤としてきていることがわかります。自らを知ること、そこから企業は始まり、そこにたどりつきます。