この季節、お行儀よく葉を茂らせる街路樹に欠かせないのが剪定です。本当ならもっと枝を伸ばし、たくさんの葉を茂らせ、生を謳歌したいだろうに、一定の規格に無個性に整えられた姿は、けっして自由ではありません。
まちには緑が必要です。まちを美しく、空気を新鮮にし、住む人々に安らぎを感じてもらうためには欠かせない役割を担っています。そう考えると、小売業におけるチェーンストアは、街路樹のようなものかもしれません。
チェーンストアが果たしている役割は素晴らしく、生活者の暮らしを豊かにする存在です。しかし、街路樹には本当に人々を感動させるものは多くありません。一定の条件下に抑え込まれた姿に、悲しみすら感じることがあります。多様性があってこそ、暮らしの豊かさは増すからです。
だから、まちの緑には街路樹でないほうがよいものがあり、そのほうが人間にもっと大きな喜びを与えることもあるのだということを忘れてはなりません。小さな店とは、そんな存在であるべきです。
個性的で、一つひとつが違う、そこにはチェーンストアにはない豊かさがあります。大量生産された商品を大量販売することはチェーンストアに任せ、小さな店は親切な友情のこもった商売でお客さまに向き合いましょう。それが小さな木であっても構いません。そこには花が咲き、実という感動が成り、利益という種が残るからです。