「経営理念って何でしょうか?」と、ある商人から問われたことがあります。今日はそのことについて改めて考えてみました。
「事業の目的は顧客の創造である」と、経営学の碩学、ピーター・ドラッカーは言いました。すなわち、事業を通じて幸せを、暮らしの豊かさを感じる人を増やすことです。
商業界創立者、倉本長治はそれをこう言い切りました。「店は客のためにある」。
また、ドラッカーといえば「5つの質問」を思い出します。
・われわれの使命は何か
・われわれの顧客は誰か
・顧客の価値は何か
・われわれの成果は何か
・われわれの計画は何か
つまり、私たちは何のために(使命)、誰に対して(顧客)、何を(顧客の価値)を、どのように(計画)、顧客の幸せ(成果)を実現するかということ。事業とは、これら一連の営みを言います。経営理念を考えるとき、この5つの質問を自らに問い続けることが必要です。
〈パウロが「やむなくば信仰を捨てよ」といい、「それでも希望は捨てていけない」と説く。もし、その希望をさえ捨てねばならぬときが来たとしても、最後まで「愛は捨てるな」と言っている。これは死ぬまで、死んでも捨てるなという人間ぎりぎりの最終のもの、「これなくしては人間ではない」というのである。商人もまた、人間だった。〉
これは倉本が遺した文章の一つです(『商人の哲学』より)。経営理念を考えるとき、私はこの一文を思います。愛こそ人間に欠かせないものと倉本は言います。同じように経営理念は商人には欠かせないものです。すなわち、経営理念とは「愛」なのです。