「悔いのない人生を送りたい。だから、本物の商売がしたいんだ」と夫が語りかけると、妻は躊躇なくこたえました。「すてきですね、一緒にやらせてください」。
人口4000人の過疎のまちの小さなスーパー「主婦の店さいち」のおはぎ。週末には1万個、平日でも5000個、彼岸の中日には2万5000個も売れます。冒頭の会話は、店を営む佐藤啓二・澄子ご夫妻がその商い道を歩みはじめた瞬間です。
もともとは食品卸を生業としていた佐市商店。親から商いを継いだ啓二さんは、商売に打ち込めない己に苦しんでいました。掛売り、配達商売では、お客様の笑顔にふれることもありません。
本物の商売を探し求めて、佐藤さんは商業界ゼミナールに参加しました。そこで佐藤さんは運命的な出会いをします。帰りの列車で、佐藤さんはあるスーパーマーケット店主と席を隣り合わせます。佐藤さんが胸の内を相談すると、店主は自身の商いの素晴らしさを語りました。
この縁を契機に業態を変えた佐藤さんを、店主は親身になって支えました。奇跡のスーパーが産声を上げ、佐藤ご夫妻が本物の商売へと歩みはじめたのは、こうした縁が出発点でした。あなたにも、あなたが本当に望むならば、こんな縁と出合えるはずです。
【今日の商う言葉】
まことの商人ならば
袖擦り合った縁をも生かす
なぜなら商いとは
人に始まり人に終わるからだ