笹井清範OFFICIAL|商い未来研究所

「働く」という漢字は、じつは漢字ではありません。

 

正しくは日本で生み出された「国字」の一つで、使われはじめたのは明治以降という研究があり、それ以前は「はたらく」とひらがなで用いられていました。この大和言葉、「端(はた)」を「楽(らく)」にするという語源を持つと言われています。

 

中国語では「工作」、英語では「work」が意味の近い言葉ですが、共に「はたらく」とは成り立ちが違います。たとえばworkの語源であるwergとは「作る」であり、「やっかいな」という意味のirksomeと同じ語源を持つそうです。

 

このように日本人は古来、単に金銭を得るための手段として働くことを捉えていませんでした。関わる人の役に立ち、その結果として自らも幸せになるという労働観です。

 

「働くとは、人のために動くこと」という経営者がいました。なるほど、「働」という字は「人」のために「動」と書きます。今日の一冊は、大山泰弘さんの『「働く幸せ」の道』です。

 

 

2019年3月に86歳で逝去された大山さんは、父が創業したチョーク製造を主力事業とする日本理化学工業を23歳で承継。入社4年目のときに「ちょっとした同情心と、“なりゆき”」(本書2ページ)で二人の知的障がい者を雇用して以来、障がいのある社員がまず今ある能力で仕事ができるように、そしてより能力を高めていけるように作業方法の工夫・改善を行ない、環境つくりに努めてきたのでした。

 

現在では、社員の70%以上が知的障がいのある社員となっています。同社の工場敷地内に立つ「働く幸せの像」の台には、次のような大山さんの言葉が刻まれています。

 

導師は人間の究極の幸せは、

人に愛されること、

人にほめられること、

人の役に立つこと、

人から必要とされること、

の4つと言われました。

働くことによって愛以外の3つの幸せは得られるのだ。

私はその愛までも得られると思う。

 

しかし、その道のりは平たんではありませんでした。

 

〈理念だけで会社を経営することができるわけではありません。理念を「形」にする必要があります。〉(98ページ)

 

同社の歴史は、障がい者の能力に合わせて健常者と同じ結果が出るようにする「工程改革」の歴史であり、理念を実行するための収益力向上の歩みでした。「ダストレスチョーク」「ホタテ貝殻チョーク」、そしてさまざまな用途で使え、表現できる筆記具「キットパス」といった独自性を持った商品による市場創造あってこそ、理念を追求できるのです。

 

「人のために働くからこそ、人は、ほめられ、人の役に立ち、必要とされる——。私たち日本人は、もう一度このことを思い出すことによって、働く幸せを取り戻せる」と大山さんは本書を通じて、私たちに教えてくれています。手許にある著書には、大山さんの直筆でこう書かれています。

 

利他の歩みこそ

より大きな

自己実現への道

 

 

〈これこそが、私が彼らに教えられ、導かれた人生の意味なのです〉(191ページ)

 

 

 

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笹井清範

商い未来研究所代表
一般財団法人食料農商交流協会理事

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