「毎日家族でご飯を食べる。お花に水をあげる。こまめにシーツを変える。たまには本を読んでみる。開業にあたって重視したのは、そんなふうに“自分の人生を丁寧に生きる”ということでした。私たちは、お金がたくさん欲しいわけではありません。お客様も働くメンバーも、みんなが幸せになれるお店をつくりたい。100食限定のためランチで売り切れてしまうから、営業時間はお昼だけ。それは、働くメンバーが仕事もプライベートも大切にできるし、よりおいしい料理と良いサービスをお届けできるからです。人を大切にするお店でありたいという想いを店名の“佰”という字に込めました」
こう語るのは、一日100食限定の国産牛ステーキ丼専門店「佰食屋」店主の中村朱美さん。2012年、京都市内の住宅街に開業以来、業績至上主義とは一線を画し、業界常識とは異なる経営スタイルを貫く理由です。
一日100食という売上を追わない経営は、次の5つのメリットを生み出しています。
第1は、長時間労働からの解放。
第2は、フードロスの解消による環境保護と経費削減。
第3は、シンプルな経営の実現。
第4は、どんな人も即戦力になること。
第5は、売上至上主義から解放された、よりやさしい働き方の実現。
その詳細は新著『売れる人がやっているたった四つの繁盛の法則』をご覧ください。
「あくまでも利益は結果です。お金は夢をかなえるための道具にすぎません」と中村さんは断言します。その夢とは、お客様においしいと喜んでもらえるメニューを提供し、従業員が生き生きと働ける店をつくること。その哲学からぶれることはありません。
本来、売上とは事業の目的を実現するための手段。しかし、多くの事業者が手段と目的を履き違え、本来の目的を見失って苦しんでいるのではないでしょうか。「それはそうだが……」と反論する事業者が多い中、彼女はやり続けているのです。